感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
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忘れられたSFの佳作。ハッピー・ドリームという麻薬が流行する未来社会を描く。人口が増えすぎて、生活必需品さえ手に入りにくい未来の社会やうつろな表情のままで街をうろつく人々の姿は、現在の社会と重なる。ハッピー・ドリームの常用者が突然姿を消すプロットは異様な迫力があった。その麻薬を供給しているのは誰なのかという謎の作り方も巧い。結末はやや楽観的過ぎた。ここで描かれた暗い未来社会の姿を深化させたのが、ブラナーの代表作の『ザンジバーに立つ』だ。2016/04/03
あーしぇ
1
再読。ハヤカワ文庫SF1〜500番までの作品をランダムに読み返すシリーズ。ブラナーのSFサスペンス。今となっては、地球の人口過剰感もドラッグの描かれ方も色々と懐かしさが漂うが、まったく古びていないし、面白い。「幻影への脱出」というわかったようなわからないような邦題は好きだが、もし復刊されたら「ハッピードリーマー」という身も蓋もないタイトルになるのかな。2015/03/19
The-Q
1
「人間がいっぱい」みたいな設定からはじまって明後日のほうに飛んでいく。ハッピードリームの理屈はどうもしっくりこなかった。「ザンジバーに立つ」ってのがこの人のベストらしいけど、どこか出してくれないかな。2012/01/09
Empirestar
1
作者が予期する地球像と現在の地球像ではやや異なれど、人類が直面している問題には変わりはない。ブラナーの社会問題に対する問題提起SFとして、ミステリの要素を加味した作品。地球人口問題を1963年の段階でかなり悲観的にとらえたSFとして、先駆的といえ、国連職員が関わるなど実によくできている。2009/10/25