内容説明
「消費依存」「ワーカホリック」「バブル現象」「環境破壊」…現代社会の生きづらさはどこからくるのか。出来るかぎり自由であるために選択肢を増やそうと、私たちは貨幣に殺到し、学歴や地位の獲得に駆り立てられる。アダム・スミスから現代の市場理論にまで通底する、“選択の自由”という希望こそが現代社会を呪縛しているのだ。市場(イチバ)で飛び交う創発的コミュニケーションを出発点に、生を希求する人間の無意識下の情動を最大限に生かすことで、時代閉塞を乗り越える道を探究する、著者渾身の市場経済論。
目次
序章 市場の正体―シジョウからイチバへ
第1章 市場経済学の錬金術
第2章 「選択の自由」という牢獄
第3章 近代的自我の神学
第4章 創発とは何か
第5章 生命のダイナミクスを生かす
第6章 「共同体/市場」を超える道
第7章 自己欺瞞の経済的帰結
終章 生きるための経済学―ネクロエコノミーからビオエコノミーへ
著者等紹介
安冨歩[ヤストミアユム]
1963年生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了後、京都大学人文科学研究科助手、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、東京大学東洋文化研究所准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
デビっちん
25
合理的な選択を考察する経済学は、その前提を考えると物理法則の否定の上に成り立つ理論であることが解説されていました。そんな前提について展開する議論は、経済学を批判するだけにとどまらず、現代社会の生きづらさの正体に迫るものでした。選択の自由を拡大しようという欲求は、不安がある限り際限はなく、自由の牢獄に転じることに衝撃を受けました。その牢獄から抜け出すためには、自愛に始まる創発の力を信じることとありました。その理屈を解説した過程での暗黙知の解説が大変参考になりました。 2018/03/27
デビっちん
23
再読。足し算し続けることで見えてくるものがあるという一方で、認識上の障害を取り除くことで見えてくるものがあることを強く実感できました。もう1つ響いたのは、自分は自我が喪失しているとわかったことです。自分はまだましな方、といった比較をしている時点で、自分自身の感覚を外部評価によって抑え込んでしまっていたとは。正直だと思っていた自分が、自己欺瞞の塊だったとは。。。2018/04/01
デビっちん
20
再読。自分の感覚が信じられなく理論を活用するというのが成功への王道だと思っていましたが、理論に頼らず自分の感覚を信じることが最高の一手になるようです。理論には都合の悪い部分があり、それが前提条件に含まれ盲点となっているからです。この逆説的な内容に衝撃を受けました。ただ、自分の感覚が良くないといけない、というのも盲点ではないかと感じました。2018/12/04
おおにし
13
NHKブックスの253ページの本であるが、読了するのにとても時間がかかった。主流の市場経済学が物理法則を無視した欺瞞に満ちた学問であるという指摘は驚きと共に十分納得ができた。しかし選択の自由批判より先の論考には理解するのに神学をはじめ、論語、フロム、ポラニーなどの思想についての基礎知識が必要で、私には十分理解出来たとはいえない。ただ、この欺瞞に満ちた市場経済学に基づく経済成長戦略を今後も続けていくことに対する危機感がこの本を読んで更に高まったことは確かだ。この本は今後も何度も読み返すことになると思う。2014/02/11
kyoko
11
安富先生の本、5冊目。目次にはさまざまな項目が書いてあるが、読みながら気がついた。最初から最後まで流れるように展開していく。経済学史のところは難しかったけど、必死でくらいついていきましたよ。わたしがちゃんと理解したかどうかは別として。後半の、著者はじめとするしんどい生き方をしてきた人たちの来し方行く末の部分は、心にずーんと響いた。そして5冊目になってきて、だんだんわかってきた。「子どもを守る」という安富先生の訴えの本質的な部分が。さらに読んでいきたい。2019/10/06