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NHKブックス
「心」はからだの外にある―「エコロジカルな私」の哲学

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  • サイズ B6判/ページ数 269p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784140910535
  • NDC分類 114
  • Cコード C1310

内容説明

「心」とは、自己の内に閉ざされたプライベートな世界なのか?環境と影響しあうエコロジカルな「心」という清新な視点から、他者や社会と生き生きと交流する自己のありかたを提示。行動や社会現象の原因を人の内面に求め、不毛な「自分探し」を煽る心理主義的発想を、身体性や他者の軽視につながるものとして批判しながら、「個性」「性格」「内面」など自己をめぐる諸問題に鋭く迫る。社会(環境)を個々人のニーズに合わせて改善し、快適な生活を主体的に形成してゆく展望を示す、自己論の革命。

目次

序論 心理主義の罠
第1章 環境と共にある「心」―ギブソンの知覚論から
第2章 なぜ「自分探し」に失敗するのか―「性格」という自縛
第3章 行動すなわち心―「内面」へのエコロジカル・アプローチ
第4章 なぜ私はかけがえがないのか―「個性」を考える
第5章 世界は私の表象だろうか―身体図式と所有
終章 身体と環境のデザイン―「真の自分探し」に向けて

著者等紹介

河野哲也[コウノテツヤ]
1963年東京生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。専攻は哲学。日本学術振興会特別研究員(国立特殊教育総合研究所)、防衛大学校助教授などを経て、玉川大学文学部助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

35
実に余剰を削ぎ落とされた鮮やかな手つきで、著者は「この私」に属すると信じられている「心」「内面」「人格」といった要素についてメスを入れていく。アフォーダンス理論などを駆使したその分析から見えてくるのは、ぼくたちの信じる「主観」が実は「外部」にある世界の事物とのインタラクティビティによってでき上がっているということだ。そうして得られた「内と外の相互作用性」という図式から、著者は実に野心的に(ある意味では欲張りにも)「障害は個性か」「性格とは何か」といった問題にまで切り込んでいく。その野心、実に侮りがたく思う2024/01/31

武井 康則

9
アフォーダンスの理論に則り我々の意識がデカルト的な唯脳論ではなく、環境と共存するものと説く。特に我々の心、精神、意識などと呼ばれるものは独立していると考えられているが故に個性といいながら、社会的長所(明朗、我慢強さ、協調性など)を求める社会の要請を内化してしまっており誰もがそうなろうと、自分探しの状態になっているという。2020/01/30

オフィス派の宇宙図

3
注目したいのは意識の超難問の否定である。<私>はこの私を中心にして宇宙に存在するが、私と<私>は分離した存在であるという前提を概念化の間違いだとする。<私>の同一性は環境の同一性であり、切り離された自我は私という一人称からなるイリュージョンだとする。いわば常識的世界観であるが納得は難しい。永井均の<私>は言語化不可能という主張に(逆説的に)繋がってくる2015/10/06

たらら

3
前半の心理主義を解体していく議論はみごと。そうか、アフォーダンスの考え方はこっちに進むことができるのかと自らの不明を恥じ入り。意識の同一性の根拠を、環境との関係の同一性に求めるところも納得できる。後半は、心理主義が生み出した教育・社会システムの歪みに分け入っていく手際もみごと。ただこの話、基本的に善意にもとづいて、正しいことをしていると思っている人々にどうしたら届くのか。個人的には前半の話をもっと詰めて、知覚/環境の相互作用を拡張してほしかったがそれはまた別書にて。2011/08/04

Bartleby

3
「心」を内面に限定にするのではなく、周りの環境とセットで考える。面白いしベイトソンのMINDにも近いものだと思うけど、一回読んだだけではまだよく分からない。一番印象的だったのはあとがきの、自分について流暢に語ることで逆に印象がうすくなっていく男の話だった。この話では探偵が意図的にしているけど、意図せずそうなっている例も多いように思う。この箇所を読んだときおもわず自分や周りの人の語り方を思い返した。2010/10/20

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