内容説明
日常生活をおおい尽くす「空間的なかさぶた」。その下から聞こえてくる持続のつぶやきに耳を澄まし、自分自身を発見する旅へと誘う。
目次
第1章 純粋持続を探せ(量と質との戦い;純粋持続とはなにか)
『創造的進化』にまつわる間奏曲
第2章 押し寄せる過去と、自由の行方(知覚という謎;記憶のありか;自由の泉)
著者等紹介
金森修[カナモリオサム]
1954年札幌市生まれ。1986年東京大学大学院博士課程単位取得退学。筑波大学助教授、東京水産大学教授を経て、現在、東京大学大学院教育学研究科教授。専門は科学思想史・科学論
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感想・レビュー
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ケイティ
28
なんとなく手に取ったら、するすると文章に引きつけられました。著者の講義を聞いているような、語り口調が心地よいです。誠実さを感じる言葉に導かれて、最後まで興味深く読み進められました。時間が社会的な概念としての空間的なものでなく、ベルクソンの「純粋持続」を提唱する哲学はもっと理解していきたい。いかに空間的時間に支配されて生きているのかにも気づきました。巻末の参考文献の解説も丁寧で、大変良書でした。2022/12/11
阿呆った(旧・ことうら)
16
ベルクソン思想のいろは。彼の思想は「生の哲学」と言われ、唯心論とされていますが、科学への造詣も相当だったのですね。2015/09/27
白義
10
ベルクソンは入門書が少ないから定評あるこのシリーズでそのエッセンスがわかるのはありがたい。主に純粋持続、外側の時計的、空間的な時間とは違う独特の時間、生命観をキーワードに、それがいかに行動や知覚の際固定化されていくかとか、あるいはその純粋持続をいかに体感するか、というのを主軸にベルクソンを整理している。やはり独特の哲学で、やんわりでも理解するのはなかなか難しい。語りかけるような文章がわかりやすくてありがたいところだ2011/09/25
非日常口
9
量が注目される世界で弁別閾を質から考える。純粋持続という名を与えられた内なる意識の時間的流れの中で次々おこるリゾームのような質的変化。一方、等質とされる外の物的時間は形骸化する。意識が身体を進化させる上での運動原理だとするなら、心が知覚する際、身体は引き算により効率に受肉し方向性を決めるようだ。知性とは世界を省略することなのだ。我々は事物を知覚し表象する過程で、その間に共感覚的な感情を伴う。記憶は常に表象に溶け込み、回想するためのトリガーを待つ。2013/08/23
masawo
8
ベルクソンの著書に出てくる理解困難な概念を具体例と共に噛み砕いた表現で解説してくれるとてもよくできた入門書。100ページ程度とコンパクトサイズだが、濃密な内容なので恐らくこの先何回も読み返すはず。もっと早く読んどけばよかった。2020/01/31