内容説明
他者との相克や葛藤に囚われる自分が担う制約・限界を突破し、より大きく広い視野をもつための方途として弁証法を捉え直す。
目次
1 制約を超え無限の可能性を孕んだ知へ(ヘーゲルは体系哲学者ではなかった?;ヘーゲルにおける体系とは何か―“展開”と“変化”;全体を見通した知 ほか)
2 ヘーゲル弁証法の原型は懐疑論にある(現実の世界は矛盾に満ちている;成長の根底には“規定的否定”がある;ヘーゲルにおける弁証法的な否定は全面否定ではない ほか)
3 自らを映す思弁的な知の構造(自分とは何かを知る哲学;弁証法の在り処としての懐疑論;日常を疑うことではなく、絶望することに見定められた哲学 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
13
ヘーゲル入門でも随一の変わり種かつ重要な本。初っぱなから面白い。ヘーゲルと言えば歴史や自然、精神全てを包摂した近代哲学最大の体型家というイメージが強いけど、それは弟子たちの編集によるものが強くて文献考証的には必ずしもヘーゲル=体系とは言えないという。そして本書が行うのは、その体系ではなく思想の方法、弁証法に的を絞った解説だ。懐疑論の継承者、発展型としてヘーゲルの弁証法を位置付け、分裂と部分的否定によると肯定、生成を生の根本にみたのがヘーゲルだと位置付ける。ヘーゲルへのイメージが大幅に変わる名著2011/11/23
新田新一
8
弁証法に焦点を当てたヘーゲル哲学の入門書です。弁証法については中途半端な知識しかありませんでした。ここに書かれた二つの相反したものを統合して、より良いものを目指す試みには惹きつけられます。弁証法を深めていったヘーゲルが袋小路に陥ったことは興味深いと思いました。否定を重ねて無の状態になります。でもそれを受け入れ直視して、人間の存在自体を高めようとする哲学を、ヘーゲルが見出したことに心を打たれます。哲学書なので難解ですが、読み終わると大いに勇気づけられました。2023/09/16
ゆきだるま
6
弁証法に終始していた。膨大なヘーゲル世界のほんの一部だと思うけど、ほかの解説本を読むのに頭の隅に置いておくといいのかもしれない。2022/09/07
masawo
5
弁証法解説の方向性が若干自己啓発じみている印象を受けるが、主要概念のみに的を絞っており、ヘーゲル入門書としてはまずまずの内容。シリーズ書籍(哲学のエッセンス)の宣伝や親バカっぷりを随所に挟みつつ、読者を優しくサポートしてくれる一冊。2020/10/16
ふにゃ
3
読みよう次第なんだろうけど、自己啓発本のようだった。弁証法って「時間」軸が入ってくるのがキーだと思っていたけれど、そのあたりがさらっとしていたんで、それをいれるとわかりやすいのではないかなという気がする。2013/06/10