内容説明
近代以前、文明の中心にあったアジアから主要物産を輸入していた日本と西欧は、鎖国、近代世界システム確立の過程で輸入代替化に成功し、併行的発展をとげた。さらに開国後、文化の相違により西欧と競合しなかった日本は、アジア間競争の勝者になっていく―。そうした過程を木綿を例に実証。物産利用に文化差が関わる事実に着目して、西欧モデルの単線的な発展段階論を批判し、アジア、西欧を視野に入れて考察するスケールの大きい日本文明論。
目次
序 アイデンティティの探究
第1部 日本と西欧の併行的「脱亜」―アジア文明圏からの自立(鎖国と近代世界システムの連関;本綿の西方伝播とイギリス産業革命;木綿の東方伝播と日本産業革命;「脱亜」の2つの形)
第2部 「経済と文化」の構想(唯物史観と近代日本;今西「自然学」への注目;文化・物産複合論;日本文明の形)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
16
ヨーロッパが資本主義で発展している時期に日本は鎖国を行っていて、遅れをとったかというと決してそうではなかったはず、だということは賛成できます。日本に必要な製品というものはなかったことです。このように非常に独創的な分析をしておられて参考になります。静岡県知事を辞めて早く先生に戻ってもらいもっと経済史の本を書いてもらいたいのですが。2014/06/03
テキィ
5
鉱物、綿を初めとする生産物の交易から、自国圏内での生産へ切り替え、産物の文化における受容の違いなど、最近読んだ本と重なる点も多く響いた。僅かな種が自ら人類に寄り添ってきたという思想はすごいな。読みづらかったが甲斐ある本だった。2012/10/21
そらいろ
2
【図書館】英国が中心となった「近代世界システム」と日本の「鎖国」を産業システムとして比較している。生産と消費を自国で賄い得たという事か。鎖国は、国外への移民流出、国内への移民受入も否定したシステムだった事、逆に近代世界システムは移民を構成要件としていた事は、現代にも通じると感じた。海外に進出して云々という文に、実際に行って国内はどうなったか?相手の生活を荒し回らなかった近代以前の中国に、共栄共存の方法が隠されているという内容にも、今の中国は…等と、平成3年出版の為か、現状を思うと色々と考えさせられた。2012/05/14
花@海
2
内容が面白くて、かなり勉強になった。もう一度よんでみたい。2011/08/09
うえ
1
「インド木綿の流入はそれまで皮革・毛織物…を中心衣料としてきたイギリス(およびヨーロッパ)の衣料体系に深甚なる影響を及ぼした」「ヨーロッパ全土に浸透し,フランスでは燎原の火のように普及」「既存の織物業の倒壊がかまびすしく叫ばれ,毛織物業者の中で破滅の危機を感じないものはなかった」「東インド会社にたいしては非難にみちた多数のパンフレットが刷られ,中には…『デビルを崇拝する異端の輩に作られた』」というものも。しかし「一世紀余の後,今度はイギリス機械製木綿がインドに『逆流』」しインド商業壊滅2014/04/06