内容説明
西洋哲学では過去、自我を自明のものとするか、全く否定するか、いずれかであった。転換期の今日、デカルトやフッサール、ウィトゲンシュタイン等を批判しながら「身体」を通して自我を捉え直す。又、哲学史上の盲点、他人の「我」=他我についても、他者理解の可能性と不可能性から独創的考察を行ない、20世紀末の新しい生命倫理等に基本的視覚を提示する。日常の経験から哲学を切り開く画期的試み。
目次
プロローグ 西洋哲学は自我をどう捉えたか
1 「我」の文法と意味―自我を捉え直す
2 自我と身体―「受肉せる主観」の確立に向けて
インタールード 他我不在の歴史(他我の存在とデカルト;モナドの交通;カントの道徳論;他我論の鳴動)
3 他我の構成―他人を理解する可能性と不可能性(「他我の構成」ということ;自他の非相称性―自分の感覚と他人の感覚;コミュニケーション行為の秘私性と誠実性)
4 自他の互換性と普遍性―他人の苦痛への視点
エピローグ 日本的「こころ」の概念
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
和菓子男子
5
「わたし」がいる。そして、「あなた」がいる。自我ばかりが問題となるなかで他我の問題に切り込んだ前衛的な哲学書。わたしとあなたの関係を客観的に考えるのはとても楽しかった。2014/10/28
午後
2
オースティンの誠実性に関する議論や、ウィトゲンシュタインの私的言語論やそれへの批判が整理されている件などは面白かった。自我と他我に関する哲学についての本で、他我について分析哲学的な手法と現象学的な手法を織り混ぜて記述を進めていく。個人的には、自我の特別性というか、私にとって、なぜ私の自我だけがこうも特別に思えるのか?という問題意識がない他我論は空々しくて乗り切れなかった。2020/10/12
べっちゃん
2
偶々古本屋で購入したが、とてもよかった。幅広い見地からの考察でこれから繋がる一冊だ。内容としても、誠実さの話や、幸福について、とても本質的で勉強になった。2011/01/07
石ころ
1
「私」とは何なのか。「私」を取り囲む「他人」とは何なのか。2016/06/24
まんまるまる亭
1
西洋哲学が自我ばかりを研究対象としてきたという件りは面白かった。ただ、自己と他己の関わりから、いつものカント倫理学批判へ続く流れがいけてなかった。個人的には、自我のなかで他我がどう再構成されているのか?という問題を論じて欲しかったなあ。2013/02/06