出版社内容情報
類人猿社会と人類家族のあいだにはどのような質的なちがいが存在し,家族を成立させるために人類の祖先はどのような変革を迫られたのか.“食と性”を,愛の領域にひきこむことによって,文化的な存在としての父性を確立させ,家族を成立させた人類の戦略を語る.
内容説明
霊長類学から迫る「食と性に〈愛〉をひきこんだ人類の戦略」。
目次
第1章 進化の背景
第2章 家族とは何か
第3章 霊長類の社会構造
第4章 性と社会
第5章 父性と世代の確立
第6章 初期人類の社会と家族の成立
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sensyuu
1
父性行動は文化的な要素をもっている。なかなか興味深い内容だった。家族や夫婦、親族のあり方などを違った方向から考えることができた。2015/01/24
Satoru Sekine Tayama
0
霊長類学から人類における父性の登場を考察した書。「人類は縄張りを解消し同性同士の連帯を強め個人がいくつもの集団に属せる可塑的な社会を目指したはずである。このため、父性は同居と近接によってではなく、約束あるいは契約によって保証されねばならなかった。これが人類的な父性の始まりである。」p148 とても面白いのだが、色んな動物が比較対象されていて把握しにくい。表をもっと活用して分かりやすくしてほしかった。 私がこの本を読んだときは単なる一研究者だと思っていたが、その後学長選でトップ当選していまや京大の総長。
おひさ
0
女性としては、現代日本社会の根強い家父長制的な差別の根源や理由を探りたく、読んでみました。まず、「全ての男は消耗品である」と村上龍が言った通り、オスは子との関係が社会学的でしかなく、出産という生物学的関係のメスと比べると、不安定で心許ない存在なのだ。故に子孫繁栄には、私(メス)の好きなオスが安心して家族を守れるように、オスに社会的に権威付けをする。だから社会的事項は全て男に優位に作られているとの事。今やメスが生きにくい社会とは、子孫繁栄よりも社会繁栄が優先されてる証拠。人類は子孫繁栄よりも我欲を優先した。2024/02/14
シマ
0
快楽においては食と性という行為が根源にあるといってよいとだろう。それには優位性を誇示するのではなく〈集団の成員がともに喜びと興奮を共有する快をともなう社会交渉〉という遊びの要素を必要とする。性についても当事者間のバランス調整が大きな要素としてある。そして、それは親族組織に囲い込まれ、その最小単位として性関係を中心とした「家族」がある。しかし子にとって、母親は確実な存在だが、父親は認知してもらう必要がある、フィクションとしての存在である。そしてそれを権威づけることで、組織としての家族をより強固なものとした。2023/04/15