出版社内容情報
「河原巻物」は,近世被差別部落民が,自分たちの由緒や特権の由来を記し,差別の不当さを訴え,平等を主張した文書.史実とはいえない荒唐無稽な内容も含まれるが,そのなかに河原巻物を生み出した近世被差別部落民の生活と宗教・文化的環境を探る.
目次
1 河原巻物の分析(河原由来書―河原の神々;長吏系伝巻―白髭明神の子孫と特権;八幡重来授与記―神功皇后への奉仕と特権;河原細工由緒記―職業の誇りと特権;三国長吏由来記―白山信仰の世界;蛭子末流由緒巻―九州の河原巻物;皮多由来書―歴史からの主張)
2 河原巻物の世界(河原巻物の成立と展開;河原巻物と宗教的権威;河原巻物と天皇;浄と穢;既得権の主張;家の由緒;被差別部落と河原巻物)
3 史料篇(河原由来書;長吏系伝巻;穢多沽券并巻物之〓;八幡重来授与記;三国長吏由来記;蛭子末流由緒巻;皮多由来書)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
9
「河原巻物」とは、近世の被差別民たちが創作した由緒書を総称する学術用語です。神話の神、実在の歴史上の人物、架空の神仏や人物を登場させながら、自らのおかれた差別的状況の不当性を説く語りは胸に迫るものがあります。当時の彼らの心性を知るうえで豊かな情報を与えてくれる史料ですが、その独自の歴史観ゆえに今となっては意味が取りづらい箇所も多くあります。分からない箇所ははっきり分からないと記す著者の叙述姿勢は好ましいですが、なかなか研究を深めるのは難しいのだろうなとも。2019/10/06
陽香
1
199105302013/12/08