内容説明
東京帝国大学とはちがう大学を目ざしてつくられた京都帝国大学。本書は、戦前の京都帝大を舞台に、西田幾多郎と田辺元という異質な個性の持ち主を中心に展開した近代知性たちの一大絵巻である。彼らの豊かな学問的達成から、師弟の友情や葛藤までを、日記や書簡などの貴重な新資料をも駆使して鮮やかに描き出した大労作。
目次
プロローグ 一枚の写真
もう一つの「帝国大学」
東京帝大と「井の哲」
「京大東洋学」の栄光
「選科生」西田幾多郎の屈辱
京都帝大、西田を招く
「予も亦苦む所あり」
田辺元、東北の孤独
西田と田辺、京大哲学科の「出帆」
戸坂潤の「京都学派」〔ほか〕
著者等紹介
竹田篤司[タケダアツシ]
1934年(昭和9年)愛知県に生まれる。東京教育大学哲学科卒業。同大学院博士課程(仏文学)中退。専攻、哲学。明治大学名誉教授。2005年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キョートマン
12
読み物として面白かった!下村寅太郎の資料をたくさん使ってるから彼が主人公みたいになっている。最後の下村と今西錦司の仮想対談も面白かった2021/09/26
swshght
10
大労作。これは「調査」「考察」「物語」の複合体だ。まず膨大な情報量に驚く。引用は研究書や新聞にとどまらない。日記や書簡も駆使することで、客観的事実のみならず、学者や学生たちの主観的心境まで押さえている。著者はそこに独自の視点を交え、「京都学派」の成立と終焉の要因を考察する。注目すべき指摘は「『場所』の倫理」と「『人格的』接触」だ。この二者が「物語」としての「京都学派」を構築している。「物語」は京都という「場所」(あるいは「圏内」)に据えられ、そこへ来た者たちの「緊密な人間関係」を中心として展開していく。2013/04/30
ア
4
西田幾多郎と田辺元を中心とする、京大哲学科の物語というかエピソード集?難しい哲学の話は出てこない。「京都学派」とされる人たちの手触りはなんとなくわかったので、しっかりそれぞれの思想を学びたい。2023/03/06
ぽん教授(非実在系)
4
西田・田辺を中核とする京都学派人脈の人間関係を西田の学生時代から下村の死までを対象に物語として描く。京都学派の幕引き人になってしまった下村との関係によって本書を執筆した著者は、自らが歴史になろうとする姿を見つめる下村を眺めながら何を思っていたのだろうか、著者も既に鬼籍に入った現在に於いて、それもまた日本政治思想史として語るべき物語になろうとしている。という感慨を抜いても資料の豊富さ内容の読みやすさなど何れも抜群で読みやすかった。2015/03/19
amanon
4
日本に輸入されて間もない哲学という学問を京都という特異な風土の中で発展させていった京都学派。本文でも触れられている通り、様々な難はあるものの、ある程度世界に通用する独自の哲学を打ち立てた西田の功績には改めて目を見張る思いがした。その西田を始めとして、田辺、波多野、三木など蒼々たる碩学が織りなす様々な人間模様には、ある種の憧憬さえ覚える。個人的にとりわけ気になったのが、東大哲学科との関係。戦後、東大からは廣松渉という哲学者が輩出されるわけだが、京大からは彼に匹敵する学者は出ていない。再考に値する気がする。2014/06/02