内容説明
歴史の川というものを想像してみよう。わたしたちが知るのはただ、流れが限りのない先へ、未知の海へ向かって流れていることである―。二五歳のときに語りはじめた歴史の物語はいったん幕を下ろし、五〇年後のあとがきであらためて振り返る。下巻・ルネサンスから二〇世紀まで。
目次
新しい都市と市民の誕生
新しい時代
新しい世界
新しい信仰
戦う教会
おぞましい時代
不幸な王としあわせな王
その間に東欧で起こったこと
ほんとうの新しい時代
暴力による革命
最後の征服者
人間と機械
海の向こう
ヨーロッパに生まれたふたつの国
世界の分配
著者等紹介
ゴンブリッチ，エルンスト・Ｈ．［ゴンブリッチ，エルンストＨ．］［Ｇｏｍｂｒｉｃｈ，Ｅｒｎｓｔ Ｈ．］
二〇世紀を代表する美術史家。１９０９年ウィーンに生まれる。ウィーン大学で学んだのち、ナチス時代にイギリスに渡り、のちロンドン大学教授、ヴァルブルク研究所所長などを務める。２００１年没
中山典夫［ナカヤマノリオ］
１９４０年生まれ。７１年東京教育大学大学院修士課程修了、７７年ドイツ・フライブルク大学学位取得。専攻はギリシア・ローマ美術史、筑波大学名誉教授。主要訳書にＪ・Ｊ・ヴィンケルマン『古代美術史』（中央公論美術出版、２００３年度地中海学会賞受賞）がある（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
113
下巻では12世紀ごろ中世のヨーロッパを中心としたところから第一次世界大戦後までをわかりやすく項目に分けて描かれています。アジアなどはトルコの侵略や中国の植民地支配くらいしか書かれていません。あとがきを読むと1935年に書かれて50年後のあとがきという著者の言葉も記されています。中学生くらいの子供を対象とした欧州史という面から読むといいのではないかと思いました。2019/05/05
よしよしニャンコ
23
上巻に引き続き、再読。下巻は中世の終わりから始まる。ルネサンス期の前後から、世界の歴史は巨大な荒波ように凄まじいダイナミズムで進行する。まるで物語に酔いしれるかのように本書を読んだが、これはフィクションなどではなく、人類が実際に歩んだ歴史。あまりに血生臭いねぇ。「歴史から、扇動や非寛容がいかに容易に人間を非人間に変えるかを学ばねばならないのです。」（P202）……そうだよね。2018/01/04
ぱなま(さなぎ)
23
大学の美術史研究室に鎮座ましましていた重厚な本『美術の物語』の著者が、これほど優しくあたたかなメッセージを送ってくれていたとは知りませんでした。もっと早く読めば良かった。本編は19世紀までの記述ですが、2001年に92歳でこの世を去った著者は20世紀の生き証人。ユダヤ人であった彼がその時代を生き抜いてこの本とその「あとがき」を現代に届けてくれたことを感謝するとともに、あるいはその時代に著されなかった本があったかもしれないことに想いを馳せてしまいます。→2017/05/14
みかん
20
上巻を読んでいた時にバタバタして放置してしまったので再チャレンジ。化石人類とか四大文明とかで挫折して近代に辿り着けない未来が見えたので今回はあえて下巻から読んでみた。読者に語りかけてくれる文体ゆえに非常に読みやすく、また想像力も働きやすかった。50年後のあとがきでは、筆者が自らの変化に驚いたり、ドイツのラジオを傍受する仕事をしていた第二次世界大戦中のことなど、時の流れと個人に降りかかる歴史の重みを感じた。2017/01/30
ヒロセ
11
著者の妹に語り掛けるような優しい口調で語られる世界史。原始から第一次世界大戦までのエッセンスを抽出するために、その何倍もの知見を著者が有しているのかと思うと驚愕させられる。しかもこれが25歳の著作とは…！ また、オーストリア系ユダヤ人の著者が、第二次世界大戦を体験したうえで書き記した「50年後のあとがき」が本書をより印象深いものとしている。原子爆弾の発明をきっかけに「次の世界大戦が世界史の最後になろうとするいま」という著者の予言が実現されないよう、よりよい未来を希求し続ける必要があることに気づかされる。2023/09/11
