中公文庫
明け方の猫

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  • サイズ 文庫判/ページ数 207p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784122044852
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C1193

出版社内容情報

明け方見た夢の中で彼は猫になっていた。猫文学の新しい地平を切り開いた著者が、世界の意味を改めて問い直す意欲作。初期の実験的小説「揺籃」を同時収録。

内容説明

明け方見た夢の中で彼は猫になっていた。猫といってもまだ新米の猫なので、四本の足を動かして歩くこともなかなか自由にはいかない…。猫文学の新しい地平を切り開いた著者が、猫の視点から、世界の意味を改めて問い直す意欲作。実験的小説「揺籃」を併録。

著者等紹介

保坂和志[ホサカカズシ]
1956年生まれ。早稲田大学政経学部卒業。90年、『プレーンソング』でデビュー。93年、『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、95年、『この人の閾(いき)』(新潮文庫)で芥川賞、97年、『季節の記憶』で谷崎潤一郎賞と平林たい子賞を受賞
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

翔亀

47
保坂さんの猫小説第3弾。「変身」のように夢から覚めると猫になっていた、とこの作家にしては珍しく物語してるなと思いきや、夢の中の出来事であると自覚していて「意識」は人間。猫の4本足と毛と眼と鼻と耳、つまり身体と感覚を持っていたらどうなるかという、心身論を自問自答する哲学小説だ。せっかく猫になったのだからもっと冒険すればとも思ったが、いつも通りの猫の「日常」を描くことで(猫の身体と感覚に幸福感を得るのだが)、猫の持つ芳醇な感覚世界を失った人間の制約を逆照射する。その代わりに人間が得たものは何だったのだろう? 2014/10/31

きょちょ

21
中編2作。 表題作は、夢で猫になったという設定。 「猫などが持つ嗅覚や触覚・聴覚などを犠牲にして人間は何を得たのだろう」という投げかけや、「何のためにとか考えるのは人間だけだが、そのように頭脳は発達したけれど、それが世界や宇宙の原理と無縁だったとしたらとても奇妙な現象だ」という発想は面白いなぁ。 「揺籃」は、見た夢をそのまんま綴っているような作品で、作者の「意図」が私にはまるでわかりませんでした・・・。 ★★★2016/09/19

しゅん

18
あとがきで著者本人も似たようなことを語っているが、二作とも死んだことに気づいていない人の話に思えてくる。今まで読んだ保坂の小説は生の充実を言語化する方向へ向かっていた。死の匂いを漂わせるものは異色なのではないか。『明け方の猫』は夢で猫になる話だが、「私」ではなく「彼」であるところがおもしろい。たまに見る、自分を外から眺めている夢を想像しながら読んだ。『揺藍』は最初期の小説で、保坂作品とは思えない不穏な一作。道路の車線がどんどん増えていくところや姉への性的な感情が湧き出るところは谷崎ばりにエロい。2017/06/07

まゆ

9
もう一回読みたいと思ってたけど、図書館では書架にありめんどうだなと先延ばしにしてたら自分の本棚にあった。今よりだいぶ読みやすかった。今早口で口をはさめない印象だけど、これはもっとゆっくりで読みやすかった。2015/10/10

qoop

8
人間としての生から猫としての生へ移行して生き直す表題作と、死の絶望を前にして生への執着から見る性の幻想を書いた〈揺籃〉の中編二作を収録。前者では著者らしい濃密ながら淡々とした日常描写から地続きで広がる世界のあり方を読ませてくれ、後者はそんな日常描写の裡に著者が潜めていた素地を見せてくれる。人間の認識範囲を越えて拡張される意識、微睡の中で時空を越えて彷徨う意識… この二作で書かれることごとはこれだけで読んでも興味深いが、後の「未明の闘争」に至るモチーフとなっているようで、その点も追ってみたい。2020/01/25

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