中公文庫
もうひとつの季節

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  • サイズ 文庫判/ページ数 220p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122040014
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C1193

内容説明

鎌倉・稲村ガ崎の借家に住む「僕」と息子のクイちゃんと猫の茶々丸。それに近所の便利屋の松井さんと美紗ちゃんの兄妹―。かれらのまわりを、ゆっくりと穏やかに時間は流れ、季節は移り変わっていく…。谷崎潤一郎賞受賞の『季節の記憶』待望の続篇、ついに文庫化。

著者等紹介

保坂和志[ホサカカズシ]
1956年生まれ。早稲田大学政経学部卒業。1990年、『プレーンソング』でデビュー。93年、『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、95年、『この人の閾(いき)』(新潮文庫)で芥川賞、97年、『季節の記憶』で谷崎潤一郎賞と平林たい子賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

29
たまたま『〈私〉という演算』を読んだから余計にこう感じるのかもしれないけれど、保坂はここに来て彼のエッセイで愚直に追及していた「死」を問う問題を小説でも果敢に問うているように映る。いや、逆だろうか。この作品が端緒となって保坂は「死」を問う必然を見出したのか? どちらにせよこれらの仕事のあと『生きる歓び』や『カンバセイション・ピース』といった、「生死」のみならず「世界」をそのノイズ(雑音)まで含めてていねいに含み入れ、カオスで豊饒な「世界」をそのまま表象する試みが始まったのかなと素人考えで批評家ぶってしまう2024/02/04

きょちょ

19
谷崎潤一郎賞受賞の「季節の記憶」の続編。登場人物も同じ。「一定の期間をおいて、もう一度出会うことっていうのは、人間に重要な何かを感じさせるものがある」は同感。登場人物の一人蛯乃木が、山頭火の「まっすぐな道でさみしい」という句の影響を受けて作る自由律俳句(?)は爆笑。1つだけ紹介、「変な名字の人だ」。保坂作品はストーリーがないように思える作品が多いが、この作品は後半の愛猫の話はちょっとハラハラさせてくれた。松井さんの理屈は屁理屈に思えて好きではないが、総じて保坂作品は私の心を落ち着かせてくれる。 ★★★★2016/06/18

しゅん

18
「ぼく」と息子の圭太(クイちゃん)と近所の松井さん美沙ちゃん兄妹、四人を中心とした描かれた『季節の記憶』続編だが、前作以上にこっちの方が好きだ。読んでいる間のこの時間が永遠に続いてほしいと思ったし、同時に永遠に続かないからこそのさみしさがたまらなく愛おしかった。ちょっと『よつばと!』を思い出した。特に好きなのは松井さんが27年ぶりに同級生と会った話の中での「『世界』とか『時間』っていうのは、たぶん『死』の置き換えだよ」という言葉。それにしてもクイちゃんはほんとにかわいいな!2017/07/18

zumi

17
帰ってきました。『季節の記憶』の続編というだけあって、やはり魅力的。小説はかくも自由なものだ。本書にあるのはもうひとつの季節ではなく、もうひとつの世界。言葉をもっているために改めて感じてしまう世界。不安定でいてどうしようもない、その定義しようもないものを、わからないまま、置き換えながら、私たちは認識していくしかない。小島信夫作品に通ずる要素多数なのも魅力的。今回の「クイちゃん」もさすがです。言語と世界にコミットする思考に思わず唸らされる。ザジと張り合う、素晴らしい子どもですね。2014/07/26

Bartleby

13
『季節の記憶』の続編。クイちゃんや蛯乃木、松井兄妹などのクセもあるけど魅力的な人たちとまた再会できたことが単純に嬉しかった(せっかくだからもうちょっと多い量を読みたかった)。日常の中で理屈っぽい会話が繰り返されるのも前作通りで、今回も「世界」や「時間」や「死」といったうまく説明できないものについてみんなグルグルと考えている。彼らが言おうとしていることは僕にとっても大切なことのような気がするのだけど、それを簡単に要約することもできなくて、一度通読してからも繰り返し読んでその心地いいモヤモヤを味わっている2014/03/13

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