内容説明
クラウゼヴィッツと並び称される十九世紀フランスの偉大な戦略家ジョミニ。ナポレオンさえ驚嘆させたこの名参謀が自らの理論の総決算として著した本書には、時代を越えて不変な必勝の原理が隠されている。
目次
戦争概論(近代兵学とその価値について;戦争と政略;軍事政策;戦略一般;大戦術と戦闘;戦略戦術の双方にまたがる作戦;兵站、部隊移動の実技;諸兵連合部隊;結論)
ジョミニについて
著者等紹介
ジョミニ,アントワーヌ・アンリ[ジョミニ,アントワーヌアンリ]
スイスのボー県に生まれ。19歳でスイス軍入隊。1804年に著した『大軍作戦論』がフランスのネイ将軍に認められ、翌05年私設副官として仏軍入隊。のちナポレオンに見いだされて皇帝側近の幕僚となり、数々の重要な作戦計画に関わる。モスクワ遠征後の14年、仏軍を去りロシアに投ず。露軍ではアレクサンドル1世以下代々の皇帝の軍事顧問を務め、作戦立案や士官養成に貢献する。1779‐1869
佐藤徳太郎[サトウトクタロウ]
1909年(明治42年)仙台生まれ。陸軍大学校卒。陸軍参謀本部部員、現地軍参謀、陸軍大学校兵学教官、陸軍教育総監部課員を経て終戦。1952年自衛隊発足とともに入隊。陸上自衛隊北部方面総監部幕僚長、幹部学校副校長、第六管区副総監を経て退官。陸将補。1961年から74年まで防衛大学校教官。2001年(平成13年)没
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感想・レビュー
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yo
21
【本当はクラウゼヴィッツ『戦争論』と並ぶ名著】「戦争はこれを全体として見た場合には科学ではなくて術である」だが、その中にも多少の理論は認められる。クラウゼヴィッツが戦争を哲学したのに対して、ジョミニは戦争を科学として取り扱おうと試みた。戦略から作戦、兵站に至るまでが章別に述べられているので比較的読みやすい。第1章戦争と政略の冒頭で、政府が戦争を行う理由を6つ挙げ、それぞれについてコメントを残しているが、ぜひともアインシュタインやフロイトにはこれを読んでいただきたかったものだ。2019/05/11
孤独な読書人
8
戦略には不変の原理がある。2017/04/09
てっき
5
恥ずかしながら今更読んだ本。中身は言わずと知れた兵術家の大著の翻訳。解説は旧軍及び自衛隊で(知る人ぞ知る)戦術家の佐藤徳太郎。クラウゼヴィッツとの対比で思想の大要は知っていたが、直接読むと大分印象が異なった。戦争論のWhat is war,ではなくHow to winに特化して書かれているので、そもそも比較するのも違うものなのかと思ったが、当のジョミニがめちゃくちゃクラウゼヴィッツを意識し機会があれば当て擦りをしているのが印象的だが、無視出来ないほどの存在感があったと考えると逆説的に戦争論の凄さを感じた。2023/09/24
isao_key
5
東洋の戦略書である『孫子』と西洋を代表するクラウゼヴィッツ『戦争論』に比べ本書は影が薄いと平間陽一氏の解説にあるが、そのとおりだろう。「しかし、近代戦略に与えた影響という視点から見ると、クラウゼヴィッツよりジョミニの方が大きいと言える」と続けている。戦略の特徴は、「点」と「線」、運動による兵力集中などからなる幾何学的な戦略論にある。この「点と線の理論」は、アメリカ海軍の戦略家マハンによって海上作戦に受け継がれた。第2章で将軍としての最高の資質について、重大決定を下す責任感と危機にたじろがぬ勇猛心だという。2015/03/16
大蔵大臣
2
戦争における必勝の法則と理論は何なのか? 彼はこれを3つの原則に集約させたと思う。戦域において作戦基地と前線の部隊に間に後方連絡線を確保・保護する。そして兵力を集中させつつ、内線作戦によって敵を各個撃破する。そして地理上、機動上重要な地点に兵力を集中させ、相手の後方連絡線を遮断する。点と線というイメージ化がしやすい戦略・戦術ではあるものの、やはり士気や指揮官の能力、摩擦といったクラウゼヴィッツの「無形的要素」からは逃れられないし、本人もそれを認めている。2023/09/07