出版社内容情報
日本人の心の深層を解明するモデルとして古事記神話における中空―均衡構造を提示し、西欧型構造と対比させ、その特質を論究する。〈解説〉吉田敦彦
内容説明
日本人の心の深層を解明するモデルとして『古事記』神話における中空・均衡構造を提示し、西欧型の中心統合構造と対比させて、その特質を論究する。人間の内界を記述するものとしての神話・昔話、さらにはファンタジー作品などの分析を通して、人類の深い知恵を導き出す刺激的論考。
目次
神話的知の復権
『古事記』神話における中空構造
中空構造日本の危機
昔話の心理学的研究
民話と幻想
「うさぎ穴」の意味するもの
日本昔話の心理学的解明
現代青年の感性
象徴としての近親相姦
家庭教育の現代的意義
偽英雄を生み出した「神話」
フィリピン人の母性原理
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
万葉語り
44
今から20年前に書かれた日本文化論。札幌で購入し積読にしていたものを読んだ。この20年に大きく変化したこともあるが、今でも十分に本質を言い当てていると思う。対立を避ける中空構造が日本人のあいまいさに繋がり、あいまいさは外部と内部を分割しない母性性につながるのかな?なんとなく理解できるようなできないような…2019-1052019/08/04
おおにし
30
ずっと昔、日本神話にみる中空構造の話を始めて聞いたときとても感銘をうけた。久しぶりに読み返してみると、この中空構造による日本人の心性の解説は今も色あせていないと思う。開国後の西洋化の過程で日本人の心が西洋的父性に占領されることなく済んだのはこの中空構造のおかげだ。しかし、中空構造のパワーが弱まると、国民的合意が一気に形成され、大政翼賛的な暴走が起きる危険性があることを河合さんは指摘している。今の政治状況をみるとちょっと不安を感じる。2018/02/10
きょちょ
29
神話はいろいろな解釈ができるが、古事記において、アマテラス、ツクヨミ、スサノオのツクヨミや、同じようにアメノミナカヌシ、ホスセリといった真ん中の神々がほとんど無視されていることに注目し、日本は中空構造であると論じているのが、実に面白い。 さらにその「中空」は良い意味では「均衡」、悪い意味では「あいまいさ」になっていると指摘している。 その中空構造を「父権化」しようとしている政治に警鐘を鳴らしているが、この本は昭和57年出版であって、今の日本は当時以上に「父権化」に向けた動きがあるのが空恐ろしい。 ★★★★2017/12/23
モモのすけ
22
「日本神話の論理は統合の論理ではなく、均衡の論理である」「日本の場合の長は、リーダーと言うよりはむしろ世話役と言うべきであり、自らの力に頼るのではなく、全体のバランスをはかることが大切であり、必ずしも力や権威をもつ必要がないのである」2015/05/05
デビっちん
21
日本は中空的な精神構造という考えが主張されていました。ここで言う中空とは中心が空っぽという意味ではなく、様々なものが中心に移り変わり全体のバランスが均衡されるという意です。西洋のキリストを絶対的な中心とした父性的分断の考えに対すると日本は母性的であると考えられがちですが、東洋でみると父性と母性が均衡しているのが著者の分析でした。このフレームは色々と使えそうな感じがします。2021/03/19