内容説明
香港の下町で食す妖しい衛生鍋、干しダコとエーゲ海の黄昏を眺めながら飲む白ワイン、メナム河のほとりで味わう激辛トムヤムクンの至福、ニューヨークで試食するユダヤ人のための中華料理、体内を南海の楽園と化すフィジーの飲料カバ、コペンハーゲン名物「獣医の夜食」などなど…。世界中を食べ歩き、旅の楽しみは食の楽しみだ、との境地に達した著者が語る異食紀行。
目次
シャロンのグルヌイユ
フランスパンによる完全犯罪
ホテルのケフタ
香港の衛生鍋
気になる気鍋
キャビア・スライディング
ウオツカを300グラム
ベレバ氏の指先
“カバ”でブラブラ
裸のメリー・クリスマス〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
276
若き日のパリ留学に始って今に至る「食」遍歴を描いたエッセイ。53篇もあり、1つ1つは短い掌編で、タッチも軽妙洒脱なもの。つまるところ、世界中から集めた前菜のオンパレードといった趣きだ。私はフレンチでも中華料理でも前菜が一番好きで、できることなら初めから終わりまで前菜だったらいいのにと思っているくらいなので、これもちょうどいい長さの食エッセイだった。グルマンでもある著者は高級レストランを薦めない。町の人たちが行く大衆的なお店で、その地のものを食べる―これに勝る楽しみはないと言うのだが、まことにしかりと思う。2015/06/03
HIRO1970
38
⭐️⭐️⭐️4月1冊目。桑名出張時に読みました。私の大好きな旅と食がテーマの本書。それで書いているのが玉村さんですから外すハズなしの本です。約20年前の本ですが、書いてある内容は60年代末期から80年頃迄の内容で既に歴史を感じさせる内容です。時代物も大好きな私にはほとんど、どストライクの心地良い作品でした。若い頃の貧乏旅がほとんどですので、高級食材は稀にしか見当たりませんがディテールにこだわる玉村さんですからエッセイとはいえツボは押さえた読みやすくてチョット物知りになれる作品です。2015/04/03
ビイーン
26
食の紀行文。読了後、日本にいながら世界中の食を堪能した気分になる。ふと、忘れかけていた20代の記憶を思い出す。初めて行ったタイのプーケットで食べたトムヤムクンが最高に辛くて美味だった。ああ、あの時の至福をもう一度味わいたい。2018/08/24
Kajitt22
14
後に、菜園ワイナリー『ヴィラデスト』のオーナーとなる著者の海外での食の紀行文集。もちろん色々な食べ物の描写も楽しいが、それぞれの短い各章の中で、かの地の風俗、歴史、人々を描いたスパイスのきいた数行が魅力的で、しかも嫌味がない。数十冊の本を出版し、絵もかき、ワイナリーを経営するなどなかなかの才人であるようだ。再読。2017/01/26
ぺーいち
11
顔をほころばせつつ涙ぐんだのは初めてです。旅先で食したあれこれと忘れがたいエピソードのワクワク感がたまりません。こと細かに聞いてくるくせに、何をどう注文しても結局同じものが出てくるという「アメリカ式接客」、ホントかウソか、とにかく大笑い。2012/06/11