内容説明
政治もまた偉大な芸術であったルネサンスのイタリアにおいては、女性たちも大胆に、あるいは不可避的に権力と関わり、熾烈な生涯を生き抜かなければならなかった。エステ家のイザベッラ、ボルジア家のルクレツィア、スフォルツァ家とコルネール家のカテリーナ―四人の魅力的な女性を横糸に、権謀術数の時代を縦糸にして織りなされる華麗な歴史物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
neimu
17
実は物凄く昔に読んだ。そして、やっぱり歴史が好きだと思った。旅行中、リアルにその時代を思い浮かべながら歩くのは、楽しかった。たくましく生きたいと思いながら、そうできなかった頃の思い出の一冊かもしれない。
黄色と橙
12
文化的栄華を極めつつも政治的には乱世の時代だったルネサンス期イタリアを生きた女性たちの物語。塩野七生の処女作。政略結婚に翻弄されたルクレツィアや、スカートを捲り上げて啖呵をきった女傑カテリーナ・スフォルツァは断片的には知っていたけれど、大きな歴史の中に再布置しつつも臨場感ある筆致で読者を引き込ませる巧さはこの頃から変わりません。地中海の覇者ヴェネツィア、島国キプロス、大国オスマントルコの狭間で翻弄されたカテリーナ・コルネールが印象的。ヴェネツィアの偽善や権謀術数を「芸術的に美しい」とするあたりが面白い。2012/08/10
KF
9
日本史は好きですが世界史となると基礎知識が無いので楽しみ切れないですね。何か他の本でも「地図を掲載して欲しい」と思ったことがありました。1400~1500台頃とすると日本は室町から戦国時代なわけです。その一筆があって「あ、そんな時代か」と思い浮かべて楽しむ事が出来ました。地図は確かに巻頭に記載されていてその都度引換して確認すれば「あ、ここね」と楽しめたはずですが怠りましたね。「しんどいな」と思いつつも最後の最後に「やはり塩野七生の作品は面白」とまとめました。ネットで調べるとこの作品がデビュー作なんですね。2023/02/23
yosa
4
塩野七生さんの文章って面白いですね。それにしても凄い時代。日本の戦国時代から忠義の文字を無くしたような世界で、陰謀が縦横に貼られて誰が敵やら味方やら。当事者としてはたまったものではないのでしょうが、物語としてはとても魅力的です。そこに生きた女性は強いですね。ねねや千代のような内助の功でなく、カテリーナ・スフォルツァやイザッベラ・デステのように自ら立ち上がってしまうとは。対照的なルクレツィア・ボルジアとカテリーナ・コルネールと合わせて描かれているのが興味深いです。2011/09/07
かえる
3
ルネサンスを生きた4人の女性たちの、それぞれの細やかな心情と共に人生を追うことができる。当時の政治・国際事情も丁寧に描かれているので、どんどん話に引きこまれていく。特にキプロス島のカテリーナ・コルネールの話は、キプロスの歴史自体を知らなかったこともあり、とても興味深かった。ベネチアの『芸術的に美しい偽善』にはため息が出る。私がカテリーナでもきっと気が付かないな…2012/01/14