内容説明
紀元一世紀なかば、エジプト生まれの無名の商人が誌したギリシア語の文献、「エリュトゥラー海案内記」は、古代南海貿易の実態を生き生きと伝える貴重な史料である。季節風に帆をあげ、みずから紅海、インド洋に乗り出した体験にもとづく記事は詳細にわたり、きわめて精彩に富む。ヨーロッパ古代史の碩学が、六十六節からなる小冊子を平明達意の日本語に訳出し、周到厳密な解説と訳註を付す。
目次
アフリカ東海岸
紅海東岸
アラビア南岸
ペルシア湾内部
インド洋北岸
インド
マライ、シナ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
52
10年前の新版を紛失していたが、旧版が入手できた。1世紀半ばの紅海からインド沿岸の、作者不明の案内記。しかし記述ははるかに遠く「ティーナイ」という名で登場する中国におよぶから驚く。金印をくれた後漢の光武帝の時代に近く、海路での東西交流を描く貴重な同時代記録。しかし読み物として、聞き慣れないギリシャ語の(現地のことばの音訳)地名オンパレードが、別世界への幻想のようにうつる。ちらほらと現代に通じる地名に出くわすのもまた楽しい。乳香・没薬・珊瑚・葡萄酒などエキゾチックな産物の名が古代への旅行気分も盛り上げる。2021/11/04
Doederleinia berycoides
1
当時の貿易事情が生々しく記されている貴重な一冊。インドの重要性を認識させられる。記述は分かり難く、付属の地図を随時参照しながら読む。2011/09/10