内容説明
イスラームとは、ムハンマドとは何か。シリア、エジプト、メソポタミア、ペルシア…と瞬くまに宗教的軍事的一大勢力となってキリスト教を席捲した新宗教イスラームの預言者ムハンマドの軌跡を辿る若き日の労作に、イスラーム誕生以前のジャーヒリーヤ時代（無道時代）との関連の歴史的解明と、さらにはコーランの意味論的分析を通じてイスラーム教の思想を叙述する独創的研究を加えた名著。
目次
第１部 ムハンマド伝（砂漠の騎士道；享楽と苦渋；ムハンマドの出現；預言者召命；メッカの預言者；メディナの預言者）
第２部 イスラームとは何か（イスラームとジャーヒリーヤ；イスラーム―実存的飛躍；宗教共同体の成立；「アブラハムの宗教」；アッラーという神；イスラームの預言者 ほか）
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイキ
7
非常に興味深い本だった。著者の井筒博士が訳されたコーランを数年前に一応通読していた事が読書の大きな助けとなりました。この本を読むと、例の集団はイスラーム原初どころか、寧ろイスラーム以前の「悪を以て悪に報いる」事が至上の正義であった「無道時代(ジャーヒリーヤ)」のベドウィンと呼ばれる者達の野獣性を持った騎士道精神が復活しているのだという事が判る。コーランにはムスリスとなった後も猶、「あのジャーヒリーヤ特有の驕慢心がむらむらと湧き起」こる事もあるのだという事が記されているのです。2016/07/08
O. M.
1
「ムハンマド伝」と「イスラームとは何か？」の２部構成。イスラーム教の創始者ムハンマドについては、恥ずかしながらほとんど知らなかったので、勉強になりました。イスラーム教が何に対するアンチテーゼとして成立したかが、当時の社会背景と照らしてよく理解できました。後段、イスラム教の基礎知識的なところはくどいところもありますが、私のような初心者に丁寧な解説になっていたと思います。2016/08/14
可兒
1
無名時代について2013/05/19
Yanqiu
0
井筒俊彦先生の卓越した言語センスが光ります。難解な内容を少しも難解と思わせず、すらすらと読ませるその筆力はとても尋常なものではない。美しい文章を読んだな、と思いました。肝心な内容はTwitterにまとめたのですが、第一部の内容で一番興味深かったのは形而下にあくまでも根を張って生きながら、卓越した感覚と知覚をもった砂漠の民から生まれた詩歌が即ち本当のアラビア文学である、とし、実存の不安にかられる彼らを救済すべく立ち上がったものこそムハンマドであり、彼らの異常なまでの「感覚」に訴えかけることによって(続）2020/05/28
