内容説明
妖艶な姿態と宗教的香気に包まれた官能的な踊りで全世界を魅惑した、「世紀の女スパイ」マタハリ。「Ｈ２１号」の暗号名をもつ彼女は、イサドラ・ダンカンやディアギレフのロシア・バレーに匹敵する人気ダンサーでもあった。その彼女が、なにゆえに、ドイツのスパイとなったのか。悦楽と裏切りと不実の代名詞として血祭りにあげられた「ベルエポックの女王」マタハリの謎にみちた伝説的生涯を、第一次大戦の暗雲たれこめるヨーロッパを舞台に描く、スリリングな力作。
目次
１ 死を待つ獄舎
２ 束の間の仕合せ
３ 家族の崩壊
４ マック・レオド大尉
５ 地獄の儀式
６ パリへ向かう
７ 霧のなかの出会い
８ サロメの踊り
９ エスヴルの城
１０ 軽やかなギャロップ
１１ 見知らぬ讃美者
１２ スパイという因果な稼業
１３ 悪夢
１４ 運命の電報
１５ 恐るべき告発
１６ むなしい弁護
１７ 軍法会議
１８ 暁の処刑
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シャル
9
虚構と伝説に彩られた女スパイマタハリの生涯を追い、彼女がどのようにしてそこに至ったのかを探ろうとする一冊。神秘的なダンサーとしての地位と名声を手に入れながらも、様々な第一次世界大戦の波の中でスパイ活動へとその身を流していく。だがそこに愛国的な信念や時勢を読んだ意識などは見受けられず、ただ目の前の承認欲求と自分の居場所を求めたがゆえの行動のようにも読める。それはダンサーとしての成功とは裏腹に、幼年期そして夫婦生活と、家庭に恵まれなかったことも影響しているのだろうか。人間の才能と欲求と行動の結果を思い知る。2015/09/20
那由多
4
伝説の女スパイだから、どんだけ凄いんだと期待するじゃないですか。持って帰る情報が割とショボかったって、ショックでした。なのに銃殺刑。【2019.8.14 投稿】
風鈴
2
マタハリつおい。生きざまがつおい。よくヨーロッパ生き抜いたな…と感心しきり。同年代の日本じゃこうはいかない。別居からの娘に会えなくなったこととかもろもろ考えたら、ＦＧＯのセイレムでのシナリオが結構腑に落ちた。2020/12/14
九尾の猫
2
頭のいい女の「裏や先を読み、計算しての言動」ではなく、頭の良くない女の「自分を飾るための嘘、それを守るための言動」が行き着いた先は破滅だった。そんな感じに読めた。
723
2
ディアギレフのロシアバレエ団とも肩を並べられるほどの踊り子マタハリ。魅惑的な肢体とダンスで男性たちを虜にしていくマタハリだが、スパイとなり最後にはすべての男性に裏切られ潔く処刑台に向かう。小説だから誇張されているシーンはあると思うが、ジャワやインドなどの異国情緒漂う踊りを、２０世紀初頭のパリで踊ったマタハリの存在は文字面だけでも斬新で衝撃的なもの。最後舞台で拍手を浴びていた頃の気分に浸って処刑台に向かう姿が凛としていて印象的。ディアギレフが同性愛者だったとは初めて知りましたが想像し難いものではないですね。2012/05/20
