内容説明
ジョン・フォード、チャップリンらとの劇的な会見記をはじめ、数々の名画・名場面を目のあたりに再現し、名優・名監督の演技・演出を熱き思いをこめて語る。大衆芸術としての映画を心から愛し、映画不滅論を展開する心温まる自伝後篇。
目次
第4部(映画批評家;蚊帳のうちとそと;ことば;パン・アメリカンの扉が閉まる;ブローチ;板じきをめくると錦蛇;ボウイとクロスビィの合唱;エドナ;とちる;二重人格性;ウエスト・百十丁目;パラマウント;七十五歳;梅蘭芳;けったいな映画 ほか)
第5部(カレンダア・1;モンタ・ベル監督の『美人帝国』;マンハッタンのカルメン・タン;酸素;シナリオ・1;《ねェ、旦那を貸してよ》;原名=タイトル;邦題=タイトル;ファースト・シーンごのみ;消滅のフィルム;生きる・死ぬ・遊ぶ;遙かなる旅;シドニー・チャップリン ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うにこ
7
ちょっぴり偏った映画マニアである女性に育てられた私は、彼女と、この淀川氏の映画評を聞いて育った。ふたりの愛ある、厳しい映画批評が好きだった。うつくしいもの、よわいもの、役に立たぬもの、矛盾にみち、整然とせぬ世界を愛し、肯定することが大前提であった彼の、ふしぎにみちた出生と育ちの秘密がみずから語られる。子どもにもわかるように説明できなければそれは真理ではない、というアインシュタインのことばを思わせる語り口と数奇なエピソードの数々が、かつてここに彼がいたことの刻印となって胸に迫る。2010/02/15
fritzng4
2
「人を見ると一緒にお風呂に入りたくなる」など、やはり凡人にはところどころで「?」となる淀川語録満載。蓮實バッシングもあり。唯一のシナリオ(ラジオドラマ)も採録されている。2016/10/30
としピース
0
彼と出会わなかったら、チャップリンやフェリーニやヴィスコンティの映画と、私はどのように向き合っていただろうかと思う。 映画と出会わなかったら、私はどのような人間になっていただろうかと思うと、慄然とする。人間は素晴らしい生き物である、ことが分からないまま生きてきたかもしれない。映画のおかげで、淀川長治のおかげで、今の私が在る。2005/12/11
fukurou3
0
1953年、著者はアカデミー賞授賞式に出席。この年、アカデミー賞はテレビに身売りしたと書く。テレビを最大の敵としたハリウッドが、アカデミー協会の莫大な赤字を防ぐため、授賞式を全米にテレビ中継した。そして今年(2022年)、Netflixの作品がノミネート。テレビは最早古いメディアに。ルネ・クレールが言ったように、映画はめいめいがポケットに入れて歩く時代が来てしまった。次はどんな未来なのか。Deep Fakeで俳優いらず、AIで自動製作、さらにVRで映画の中で生活する、まさに映画の世界が現実になるのか。 2022/03/24