感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハチアカデミー
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B+ 二葉亭のいう牛の涎、身辺雑記がだらだら書き綴られる、後藤明生の中篇小説。引っ越し、幼なじみの妹からの手紙、見知らぬ男からの電話などなど、どうでもよいことを、どうでもよいこととして書く。が、これはひとつの詐術、文学実験である。日常と作品の間に挟まる、作者というフィルターが重要。タイトルは、たどり着けない目的地としての故郷(永興)へ向かい、また戻る思考の流れを表している。過去や記憶とはそういうもの。それを再構築しようと、私たちは日々記憶を辿り、過去を語り、写真を眺める。過去を遡る人間の思考が主題の良作。2012/06/12
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