感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
16
池波さんの珍しいノンフィクション作品。本書で歌舞伎役者二代目中村又五郎が『剣客商売』秋山小兵衛のモデルとなった人物だということを知りました。その芸談や後進への指導ぶり、助言を読むうち、厳しくも優しさを秘めた役者像が小兵衛へと重なっていく。あとで調べたら鬼平シリーズや剣客シリーズ、仕掛人シリーズ(音羽の半右衛門役)に出演。しかも82年、83年には小兵衛役で『剣客商売』に出演していたとか。また劇作家・演出家としての顔を見せる池波さんも興味深かった。2020/08/21
sawa
4
☆☆☆☆ 『剣客商売』を読み始める前に読んでおこうと。又五郎さん、こんなにもすごい方だったのですね。役者として、人間としてのすばらしさがとても伝わった。舞台見てみたかったなあ。国立劇場研究生の話にいつも出てくるが、そこでも又五郎さんの厳しさは語られていたが、本当なんだなあ。2010/11/04
MI2
3
先代の中村又五郎丈にまつわる話を時代小説家・池波正太郎氏がまとめられた本。 著者の代表作『剣客商売』の秋山小兵衛のモデルが又五郎であることは初めて知った。 国立劇場養成課の草創期の講師としての姿が描かれたり、東宝歌舞伎(一時東宝が吉右衛門劇団の主力俳優を松竹から引き抜き、帝劇などで歌舞伎を主催したことがある)の内情やその時代の梨園の雰囲気などを垣間見うる点でも興味深かろう。 どちらかというと、著者の又五郎贔屓のエッセイといった風であるが、読み方によれば違う楽しみ方もできる一冊と思う。2011/11/20
ヨーコ
2
歌舞伎好きの先輩から紹介された本。穏やかな印象の又五郎さんについて池波正太郎先生が書かれた本。面白くない訳が有りません!2013/10/22
コレア
1
吉右衛門丈が天に召され、嘆息の日々にYouTubeで画像など追ううち、松浦の太鼓の其角役に又五郎さんがいた。暦は浅くとも、その深い芸が伝わり、巡り巡ってこの本も見つける事に。 歌舞伎の未来を見据えた後進への厳しい鞭撻、変化の波を恐れぬその意欲を、劇作家としても歌舞伎に関わった池波氏が、又五郎丈の酷薄な前半生に驚きつつ淡々と、しかし、ファンとしての温かい眼差しででも書いている。 この時まだ昭和52年。今や国立における通し狂言の試み、スーパー歌舞伎、平成中村座等などなどが、その未来となり花咲き実をつけている。2022/01/20