出版社内容情報
ルネサンスの巨匠ミケランジェロ。その波瀾の生涯をたどり、作品に秘められたカオスを生きる力を見出し、躍動する人間像を提示する
内容説明
ダヴィデ、システィーナ礼拝堂天井画、「最後の審判」などで知られるルネサンスの巨匠ミケランジェロ。彫刻や絵画のみならず、建築、素描、詩篇にいたる超人的な芸術活動の核心には何があるのか。八九年に及ぶ波瀾の生涯をたどりつつ、代表的な作品を精緻に読み解き、そこに秘められたメッセージを解明していく。レオナルドの対極に位置する「混沌」を生きる芸術家として再発見し、ミケランジェロ像を刷新する。
目次
序章 ミケランジェロとレオナルド
第1章 若い日の情熱―「ピエタ」と「ダヴィデ」
第2章 権力に抗して―「天地創造」
第3章 芸術思想の核心―ユリウス二世墓廟とメディチ礼拝堂、そして未完の彫像群
第4章 終末への問い―「最後の審判」
第5章 建築への意思―フィレンツェとローマ
第6章 詩人の素顔―ソネットと素描
第7章 最後の「ピエタ」へ
終章 「混沌」を生きようとした芸術家
著者等紹介
木下長宏[キノシタナガヒロ]
1939年、滋賀県生まれ。同志社大学大学院文学研究科(哲学・哲学史専攻)修了。近代芸術思想史。京都芸術短期大学教授を経て、1998年より横浜国立大学人間科学部教授、2005年退職。私塾“土曜の午後のABC”を横浜で開設(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュンジュン
12
これは本書の魅力であり、ただ僕的にはマイナスなのだけれども、ミケランジェロに対する著者の距離感が前のめり過ぎるように感じる。あとがきの言葉~「誰もが自らの眼と感性で作品と向かい合うために、この本が役立てればと願っている」とおり、著者の想いと感性で論じすぎている。個人的にはもう少し客観的な姿勢が欲しい。システィーナ礼拝堂の「天地創造」と「最後の審判」の解説は、口絵とにらめっこしながら楽しめた。2021/01/29
Narr
8
ミケランジェロを「混沌」を生きる芸術家としつつ精神的営為である芸術表現に迫る。著者はミケランジェロを秩序を探し求めたレオナルド・ダ・ヴィンチと対置するが、作品を通すと唸る。特にシスティーナ礼拝堂の天井画と「最後の審判」。「最後の審判」については伝統的な構図をガン無視、天使・使徒・聖人の位階も無視、アトリビュートも極力描かず、しかしこの世の誰も見たことのない最後の審判という「混沌」を描くその「テリビリタ」。著者はこの壁画を鑑賞者の幻想的な経験が為される舞台に喩えるが…。いつか体験しに現地に行きたい…。2020/08/05
中島直人
8
コスモスケープのダ・ビンチ、カオスケープのミケランジェロ。面白い視点。ミケランジェロの生涯を、一つのストーリーとして見ることが出来、私的にはスッキリ。2015/09/16
おとん707
7
ミケランジェロの作品を見るうちにその生涯に疑問を持った。ローマ教皇に仕えたり、対するメディチ家に仕えたり、また共和制を支持したり転向の連続だ。彼の作品解説書は多いが伝記本は少ない。本書は伝記本ではあっても作品解釈が中心であり始めは戸惑ったが、やがて彼の行動を理解する鍵はその時々の作品自体にあることがわかってきた。伝記としての事実と著者自身の思いが強い作品解釈が混然としているので読みやすくはないが、謎は少し解けた。例えばシスティナ礼拝堂の天井画や最後の審判にしても当時の教会への疑問が反映されているようだ。2020/03/30
コス
7
ミケランジェロ展にいって売店で購入しました。彫刻、絵画、建築の全てに才能を発揮したミケランジェロ。その逸話が色々書かれていて読んでいて楽しい本でしたシスティーナ礼拝堂・・・行ってみたい・・・2013/10/12