出版社内容情報
大元帥として日清・日露戦争を遂行し、新生日本を近代国家へと押し上げた「理想の君主」の実像に迫る。
内容説明
王政復古の旗印のもと、幕府や摂関職が廃され、若き明治天皇を戴く維新政権が誕生した。だが、近代国家の建設が急速に進むなか、「天皇親政」の理念はやがて形骸化する。陸海軍を統べる大元帥として日清・日露の両戦争を遂行するなど、政府への協力的姿勢を貫いた天皇であったが、その陰には、自らの意思と政府の意向の乖離に苦悩する、孤独な君主の姿があった。政府と宮廷の対立関係を軸に、理想化された天皇の実像に迫る。
目次
第1章 幕末の政局と睦仁の降誕
第2章 激動の中の即位と明治維新
第3章 天皇権威確立の努力と挫折
第4章 維新の宰相、大久保の政治指導
第5章 伊藤首班の集団指導体制
第6章 立憲制の確立と皇室制度の形成
第7章 憲法の制定と立憲政治の開始
第8章 議会政治の進展と日露戦争
第9章 天皇の晩年と明治の終焉
著者等紹介
笠原英彦[カサハラヒデヒコ]
1956年(昭和31年)、東京都に生まれる。1980年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1985年、同大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。1988~89年、2000~01年、スタンフォード大学(米国)訪問研究員。慶應義塾大学法学部教授。専攻、日本政治史、日本行政史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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RED FOX
14
明治天皇のことは全く知らなかった私には丁度いい本でした。生まれる直前から始まるので時代背景をさらってくれて読みやすかった。多くの儀式がこの時から始まり、しかも意外と儀式をやらずに政治や軍事に悩む姿、知らなかった。中公新書、いっぱい読みたくなっております(^^♪2017/08/08
雲をみるひと
13
明治天皇というタイトルだが、明治天皇が存命だった時代の年代記のような内容。維新までの期間を除き明治天皇や皇室そのものよりも政府の動向の記載が主。全体的に年代順に事実が羅列されている印象。明治天皇及び明治期についてはより深い研究が必要な気がする。2020/10/13
桑畑みの吉
3
壮年期の肖像画のイメージが強いが父孝明天皇が急死した時は弱冠15歳、当時は元勲たちに頼るしかなかったであろう。そんな明治天皇の誕生から崩御迄の激動の61年を僅か300ページで紹介している。当然ながら登場する元勲・関係者の経歴や事件の詳しい背景の説明はなく、明治時代の政治に詳しくない私はただただ活字を追うだけの読書になってしまった。もう少し副題の「苦悩する~」部分にスポットライトを当てても良かったのではと思った。2020/06/30
富士さん
3
再読。明治人はその実江戸人である、ということを再認識させられます。神聖不可侵の天皇、永遠不変の日本みたいな“設定”を、ただの“設定”として認識するメタ感覚を切実に江戸人は持っており、空想に浸って現実と区別できなくなるような余地はなかったのです。天皇だから尊重されるとか、国に尽くしたから賞賛されるなどということが、無条件に起こりえないことは、他ならぬ天皇自身が体験したことであったでしょう。自分たちの地位は自分たちで守る、自分の名誉は自分で守る、他ならぬ天皇がそんな明治人を代表しているように思いました。2016/08/28
鬼山とんぼ
3
明治天皇を中心に据えて見た明治期の詳細な政治史。複雑緻密な人間関係を把握しないと理解しにくく、私には大変時間が掛かった。天皇は薩長の権力奪取の道具として担ぎ出され、形式上、新政権の絶対的主権者ではあったものの、実権を握る藩閥内閣との連立支配体制で最終的認可を与えるものの「輔弼を受けて決定を行う」存在で自分からの発議権はなく、その後の憲法制定、議会創設以後も、名実の微妙な差異と激しい時代の変化に政治家も天皇自身も苦悩しながら、国家の発展を支えていく。そういう構図の中でご苦労された明治天皇の姿が描かれている。2016/05/22