中公新書
幕府歩兵隊―幕末を駆けぬけた兵士集団

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  • サイズ 新書判/ページ数 295p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121016737
  • NDC分類 210.58
  • Cコード C1221

内容説明

幕府歩兵隊をご存じだろうか。幕末の徳川幕府には近代装備の兵士がいた。水戸の天狗党とたたかい、長州の奇兵隊とたたかい、薩摩の小銃隊とたたかい、幕府瓦解の後は、関東・東北・北海道を転戦し、全官軍を向こうにまわして最終ラウンドを飾った。幕末の歩兵は、サムライでもなく帝国陸軍の兵隊でもなかった。この歩兵隊という特定の視界から幕府倒潰の秘密に迫る回路を探り、彼らを歴史の主役に抜擢する。

目次

第1章 幕府歩兵隊へのファン・レター
第2章 歩兵組の創設まで
第3章 歩兵の社会学
第4章 長州戦争と幕府歩兵隊
第5章 慶応の兵制改革
第6章 鳥羽伏見の戦
第7章 戊辰戦争と歩兵隊

著者等紹介

野口武彦[ノグチタケヒコ]
1937年(昭和12年)東京に生まれる。1962年、早稲田大学文学部卒業。その後、東京大学文学部に転じ、同大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を経て文芸評論家。主な著書に『江戸の歴史家』(筑摩書房、1979)(サントリー学芸賞)、『「源氏物語」を江戸から読む』(講談社、1985)(文部大臣賞)、『江戸の兵学思想』(中央公論社、1991)(和辻哲郎文化賞)など
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感想・レビュー

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skunk_c

65
幕末史を俯瞰しながら、語られるのは幕府が創設した銃を持つ歩兵軍団。当時の旗本およびその師弟たちは兵士としては使い物にならない者も多かったようで、幕末には江戸の下町に集まってきていた浮浪者や博徒などの荒くれ者を雇い兵として歩兵か、訓練を施したようだ。したがって素行は悪く駐屯地界隈では狼藉を働いたようだが、戦場では奇兵隊や薩摩軍に劣らぬ戦いをしたとか。著者はその場面を「活写」することで、この「戦うしか生きる術のない」プロレタリアート集団を描く。特に江戸開城後箱館戦争までのその戦いぶりがなかなかスリリング。2022/05/26

印度 洋一郎

9
 幕末に西洋文明と接触し、軍備の近代化に乗り出した徳川幕府の正に切り札的部隊だった「歩兵隊」。その誕生から、幕府を離脱して戊辰戦争を転戦した最期までを追った好著。とにかく文体が読み易く、テンポの良い語り口だ。江戸の喰いつめ者達が集まったやさぐれ集団ながらも、実戦で犠牲を出して、近代戦を体得していった。これはそのまま、封建時代の侍から、明治時代の日本軍への、正に過渡期に日本人がどうやって近代軍を受け入れていったか、その貴重な記録だ。侍の発想を変えられず、ハードだけ揃えてもソフトが伴わなかった、幕府軍が哀しい2014/02/01

なつきネコ

7
歩兵隊への愛を感じてよいな。風雲児達と陽だまりの樹で、知っていたが、竹中半兵衛の子孫の下の役立たず部隊の印象が強かったが、けっこうやるのね。歴史の陰でそこそこ戦い、敗北の陰で消えてしまう。歩兵隊の創設期から崩壊まで、詳しくてわかりやすい。草創期の講武所の話とかなかなか面白い。鉄砲をやらず弓ばかりに人が集まるとか。やはり身分が高い武士が足を引っ張り、整えるのが苦労。下を集めてもうまくいかない。驚きは鳥羽伏見前に、岩倉具視が折れかけていた事、庄内藩が暴発しなければ。鳥羽伏見の敗因が指揮系統だったのは驚き。2016/06/05

4
日本初の軍歌『宮さん宮さん』に「城も気概も捨てて吾妻に逃げたげな」との一節があるが,その当事者がこの本の主人公,幕府歩兵隊。 1862年,開国後の徳川幕府の軍事改革で創設された歩兵隊は農村の貧困層と江戸のその日稼ぎの人々から構成され,西洋式の近代型装備で長州征伐,鳥羽伏見の戦い,会津戦争を戦い,1869年に函館五稜郭で降伏して解散するまでたった7年だけ存在した軍隊だった。武士でも帝国陸軍でもない,傭兵に近い歩兵たちにスポットを当てて幕末軍事史を読み解く一冊。いろんな知識が次々と繋がって楽しかった。2019/10/02

彩也

4
戊辰戦争の幕府軍、というと、先祖伝来の鎧兜姿のイメージがあるが、西洋式の銃兵隊もあった。その実体には、長きに渡る幕藩体制の矛盾が結集している。旗本・御家人というのは本来戦闘が仕事であるはずだが、その役割を担えなかった。歩兵隊の中核となったのは、農村から出てきた(「農」から外れた)「プロレタリアート」の男達であった。有能な指揮官となった大鳥圭介や土方歳三も「士」身分ではないあたり、面白い。多くの史料にあたった力作だが、鳥羽・伏見以降の戊辰戦争については紙幅が足りなかったか、やや駆け足。出来れば地図も欲しい。2011/08/21

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