中公新書<br> 吸血鬼伝承―「生ける死体」の民俗学

中公新書
吸血鬼伝承―「生ける死体」の民俗学

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  • サイズ 新書判/ページ数 208p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121015617
  • NDC分類 388.3
  • Cコード C1239

内容説明

「吸血鬼」はホラーの主人公としてこの世に生を享けたわけではない。それは、人びとが切実に恐れる一つの“現象”だった。東欧を中心に、吸血鬼にまつわる伝説・昔話・公文書・俗信の記録などを丹念に読み解くと、そこには、人びとの信仰や禁忌の有様、疫病や戦争、そして死そのものへの不安が色濃く影を落としていることがわかる。民族によって多様な姿で語り継がれてきた「生ける死体」たちとは何者なのか。

目次

1 フォークロア的前提
2 民族の伝承を訪ねて
3 東欧の「吸血鬼」像
4 「ヴァンパイア」を追って
5 吸血鬼と歴史

著者等紹介

平賀英一郎[ヒラガエイイチロウ]
1958年(昭和33年)、島根県に生まれる。早稲田大学第一文学部演劇専攻卒業。コンスタンツ大学、ブダペスト大学およびデブレツェン大学に留学。デブレツェン大学より文学博士号Ph.D.取得。論文多数
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感想・レビュー

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組織液

23
東欧を主体とした吸血鬼の伝承を述べた本です。吸血鬼というよりは副題の『「生ける死体」の民俗学』という方が合ってるような気がします。吸血鬼というと貴族服に黒マントというような姿を想像しますが、それは文学によって生まれたイメージで、伝承では雑にまとめるとゾンビのような姿と言えるんじゃないでしょうか。東欧の吸血鬼が血を吸うことは多くない。吸血は吸血鬼の本質ではなく「生気を奪う」の比喩表現で吸血への拘泥は西洋近代の病理だというのは中々衝撃でした。昔話と伝説の違いを知れたのも良かったです。2020/06/23

サアベドラ

15
現在の吸血鬼伝説の原型となった東欧の「生ける死体」の怪異譚を集め、民俗学的に考察した本。著者はハンガリーの大学で博士号をとった人物(ただし、日本では教職についていない模様)。本書によると、①吸血鬼伝承はスラヴ圏で盛んであり、ドラキュラ公で有名なルーマニアは本場ではない、②この怪異の本質は「埋葬された死者が蘇り、生者に害をなす」ことであり、「吸血」は付随的な特徴にすぎない。③M字でマントで紳士で八重歯がステキなあの造形は勿論創作である。おもしろかったが、各民族の吸血鬼伝承を列挙しているところは退屈だった。2013/11/10

千尋

14
東欧(ドイツ~ロシア地域)の吸血鬼を中心に伝説や昔話などの史料を読み解き、当時の人々の宗教信仰、ペストなどの疫病や戦争、死への恐怖が背景となっている事を述べている研究書*東欧の吸血鬼は西欧の吸血鬼(みなさんが思い浮かべる吸血鬼のイメージ)とは異なっており、まさに「生きる死体」(ゾンビのようなもの)だと思いました*2012/01/12

三柴ゆよし

10
栗原成郎『スラヴ吸血鬼伝説考』と内容の重複があるが、こちらのほうがよりコンパクトでアカデミック。納得いかない箇所もまああるけれど、類書がすくないのでね……。2020/11/15

二笑亭

8
ドラキュラによって現在のイメージが固定される以前の東欧の吸血鬼は、「蘇った死体の来訪」であり吸血行為は必ずしも絶対の要素ではないのは目から鱗。日本の伝承と比較しながら考えると結構面白い。火葬の日本に吸血鬼伝承はないが、死者の来訪自体は肉体の伴わない霊の話がある。ウクライナに伝わる「水辺に棲み家畜に悪戯する」というのは河童と重なる。やはり離れた国でも想像力が共通する部分があるのだろう。2022/01/31

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