内容説明
20世紀は戦争の世紀であり、一国の命運はしばしば独裁者の手に委ねられた。だが独裁者の多くが晩年「神経の病」に冒されて指導力を発揮できず、国民を絶望的状況へ導いたことはあまり知られていない。彼らを襲った疾患とはいかなるものだったのか。政治的指導者から作曲家、大リーガーまで、多彩な著名人を取り上げ、貴重な映像と信頼に足る文献をもとにその病状を診断する。神経内科の専門医がエピソード豊かに綴る20世紀史話。
目次
震える総統
言葉を失ったボリシェヴィキ
主席の摺り足
大統領たちの戦死
芸術家、大リーガー、兵士
20世紀のファウスト博士
映像の中のリーダーたち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
88
神経内科医の著者が、20世紀の権力者の病気を画像や文献から推測する。ヒトラーはパーキンソン病だったし、毛沢東はALSだった。その他、多くの人物が神経の障害を患っていたようだ。それが、歴史に影響を与えたらしい。こういう着眼点の本は初めて読んだので興味深かった。ただ、それに振り回される一般人は、あまりにひどすぎる。今も、プーチンがパーキンソン病ではないかとの噂も出ているが、もしそうだとしたら何か抑える手立てはないものか。2022/03/24
Willie the Wildcat
27
一時代を築く、名誉・・・。一方で心身の変調。1人1人記載人物の心境と、歴史を思い浮かべる。誰が客観的な判断を下すのか、そして理想の最期とは・・・。確立された制度の有無、そして、突出したリーダーの有無、の影響を感じる。印象に残るのがラヴェル氏。持て余る才能と現実。無念さを感じる。対照的だったのがフォルデン博士。戦争下であっても『人間の尊厳』の尊重は必須。神経内科の視点、興味深い歴史を振り返る視点。「歴史が判断」かぁ・・・。2013/01/16
金吾
26
○神経内科医の著者が権力者たちの病状を分析しています。専門的な話をわかりやすく書いているので面白かったです。またあらためて人間は死を免れることはできないことを痛感しました。2021/06/07
蘭奢待
25
主に独裁者の写真やビデオに残る症状から病気を推察する。医師による説明は納得感あり。後書きが秀逸。2022/08/20
イトノコ
23
神経内科医の著者が、ヒトラー、レーニンとスターリン、毛沢東、ウィルソンとルーズヴェルトなどの指導者の病を神経学的に分析。/既読の「世界史を動かした脳の病気」と被る部分も多かったが、面白く読了。政治指導者と言えど1人の人間、存在感が巨大化すると病を得た時の影響も甚大。日本でも病を得る首相はいるが、大きな問題にはなっていない。政権交代のシステムが成熟しているのか、それとも替えの効く人ばかりなのか…。後半の病が顔に出る、と言うのには同意。どこかでは表情をAIに認識させ、認知症を早期発見するシステムができたとか。2021/04/08