内容説明
インドネシアのスラウェシ島の東、ハルマヘラ島の西側にモルッカ諸島がある。ここは丁字（クローブ）の産地であり、中世の香料貿易の中心地の一つであった。一四九四年にポルトガルとスペインはトルデシリャス条約を結び、世界を二分割して自国の勢力範囲を定め、丁字の島をめざした。本書は十六世紀前半のモルッカ諸島を舞台とし、丁字貿易をめぐるポルトガル、スペイン、テルナテ王国などモルッカの諸王国の対立抗争をえがく。
目次
序章 トルデシリャス条約とポルトガル、スペインの海外進出
第１章 「丁字の島」を求めて（香料の島々；フランシスコ・セランの生と死）
第２章 マルコの島々（マゼランとその船隊；マルコ諸島の政治と社会）
第３章 ポルトガル、スペイン、マルコ（要塞の建設；スペイン船隊の奮闘とサラゴサ条約）
第４章 「植民地支配」の試みとその挫折（「征服者」トリスタン・デ・アタイデ；アントニオ・ガルヴァンとその運命）
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
83
モルッカ諸島はボルネオの東にある奇妙な形をしたスラウェシ島の更に東、ニューギニアとの間の海域にある。垂涎の香料、丁子（グローブ）の原産地。莫大な利益を生む取引はイスラム勢力に牛耳られていた。ポルトガルはインド航路を開拓、東進してモルッカ諸島に先着。一方、スペインもマゼラン艦隊が新大陸の南に海峡を探し、マゼランを失いながらも西回りで辿り着く。そして在地の小国テルナテ王国とポルトガル・スペイン両国との駆け引き。教皇さまが定めた噴飯ものの条約の縄張りの西か東か微妙であったが紆余曲折があってポルトガルの支配下に。2020/04/09
俊
18
モルッカ諸島で産出する丁子を巡ってのポルトガルとスペインの争いを解説している。モルッカ諸島を中心に据えて大航海時代を眺めているので、時代全体を俯瞰したような作品ではない。ポルトガルとスペインのモルッカ諸島住人に対する行為は、当時のアジア諸国に対する「通常」の行為なのだろう。本当にひどい話だ。ただ、モルッカの権力者も欧州の力を自分たちのために利用しようとしていたりして、単純に欧州が悪いという話でもない。収奪的行為が横行する時代に生きる民衆の苦難の一端が窺えた。 2015/08/30
gogo
6
大航海時代のモルッカ(マルク)諸島の歴史を，ポルトガルとスペインとの関係からたどる。本書の舞台であるテルナテ島とティドレ島は伊豆大島ほどの大きさで，その間は約１kmしか離れていない。両国は当時世界最大の丁子生産量を誇ったこの2島を目指し航海した。ポルトガルはテルナテ側と組んでスペインを退け，その後モルッカ諸島の王族や住民を蹂躙した。一方で，テルナテとティドレは地域の2大勢力であり古くから内在的な対立を抱え，互いにポルトガルとスペインという外来勢力を取り込み，域内の覇権を確立しようとしていた。2015/01/28
印度 洋一郎
5
16世紀、当時高価な貿易商品だったスパイスの丁子(ちょうじ＝クローブ)の世界唯一の産地であった、東南アジアのモルッカ諸島に到達した、ポルトガルとスペインが現地の王国をも巻き込んで、貿易の独占を図って繰り広げた外交、謀略、紛争の数々を概観。「大航海時代にアジアを侵略するヨーロッパ」という定型化された視点ではなく、現地の二大勢力テルナテとティドレとの関係や、モルッカ諸島内部の政治状況も合わせて見る事で、権力を巡る暗闘がより深くなる。現地に内在する対立が外部の介入で激化するのは、まるで冷戦時代の代理紛争だ。2016/08/31
スプリント
1
なじみのない地名と人名のため中々頭に入ってこず読み切るのに時間がかかりました。大航海時代の走りとなったポルトガルとスペインが如何にしてモルッカ諸島（本文ではマルコ諸島）の貿易路を築いたのかが説明されています。圧制をひいたカピタンを更迭し、次のカピタンも圧制を引きやがて更迭されていく・・・負の連鎖が続き住民や王族が振り回されていく。大航海時代に世界各地でみられた光景が詳しく記述されています。2013/11/24
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