内容説明
ドレフュス事件は、反動勢力(政府、議会、裁判所、軍部)の悪業に対する正義(新聞、知識人、世論)の勝利といえるのか。ここに露呈したのは、公的原理と秩序が崩壊したなかで孤立化し浮遊化した中産階級の「モッブ」化現象であり、それに追随する、政治の理念を失った議会・政治家の堕落現象ではないか。「危険の思想家」ソレルが見透し批判したものこそ、この民主主義のもたらす危機であり、信仰と道徳を失った知識人の頽廃であった。民主主義のもたらす危機を見透した予言者=思想家の時代診断。
目次
序 ソレルへの関心
第1章 笑劇の始まり
第2章 街道に散る民主主義
第3章 事件の憂鬱な結末
第4章 ソレルと道徳の社会学
第5章 ソレルと生産者の倫理学
第6章 ソレルと「社会詩」としての神話
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
2
「ソレルは、民主主義は他の政体とちがって、他の政体以上に道徳と精神への配慮、道徳と精神からの批判が必要なのだ、という。第一に、道徳感情は、自己反省的な、自己規律的な精神のうちでのみ生き、その精神によってのみ熱と力と方向が与えられる。第二に…自己規律的な精神は、批判によって緊張する精神の所産であって、この緊張なしに持続し得ない…第三に、民主主義の政治では、批判する者と批判される者とが、あるときには背を向けあい、別の時には手をとりあって混然と生きている。批判される政治家は、批判する国民が自分で選んだ者である」2023/11/03
suzuki-takefumi
0
ドレフュス事件が前半分、後半分はソレルの思想について延々と綴られている。後半は「ソレルって?」という程度の知識しかないのでさっぱりだった。マルクス前後からの思想、哲学史を踏まえてないと厳しそう。2014/05/11
gkmond
0
あまり好きになれるとは思えない思想家の紹介。ドレフュス事件の回りで起きていたどんちゃん騒ぎの紹介も。ドレフュス本人が置いて行かれているという指摘に昔も今も変わらないと思った。2010/01/12