内容説明
一九九一年末のソ連邦解体後、新生ロシアは鉄の扉に覆われた秘密文書を積極的に公開した。日本関連の文書も明らかになり、秘められた真相公表が日ソ関係史の書き替えを迫っている。本書は、戦前の社会に衝撃を与えた女優・岡田嘉子の越境亡命事件、日本共産党と日本社会党のソ連資金疑惑、北方領土など日ソ交渉の舞台裏をソ連公文書を基に解明し、理想と幻想の国家・ソ連に憑かれた日本人の悲喜劇を描くノンフィクションである。
目次
第1章 恋の逃避行の真実
第2章 日本共産党のソ連資金疑惑
第3章 社会党資金疑惑
第4章 未公開の日ソ裏面史
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
penguin-blue
40
旧ソ連崩壊後、ロシアはソ連時代の公文書を積極的に公開。その中から今まで闇に隠れていた日ソ関係を紐解く、というなかなか刺激的な主題。書かれたのはもう20年以上前で、女優の岡田嘉子さんの逃避行の話とか、主に日本の左翼系の政党とソ連共産党との裏の関係とかがテーマ。歴史や国際関係の裏側を一寸だけ覗き見た感じがしたけれど、ここにとりあげられたのはほんの一部なのだろうし、公開されているのも本当は全部ではないだろう。過去の歴史も今の政治や外交も結局表に出ているのは一部分で裏側は恐ろしく混沌として深いのだと改めて感じた。2017/06/17
ナツメッグ☆
4
岡田嘉子と杉本良吉は、当時のソ連がスターリンの粛清のピーク時だったという悲劇が悲しい。社会主義に未来があると信じての逃避行だったのに政治は残酷だ。病気の奥さんを置いて岡田と越境した杉本、人間的は許せない。日本共産党へのソ連資金の流入、日共は否定しているがソ連に内通した野坂や袴田の手にわたっていたというのはいかにも苦しい。それにもまして犯罪的なのは、日本社会党だ。貿易操作を利用しての資金還元は、否定がいかにも嘘くさい。アメリカのCIA,ソ連の党中央委員会と政治に暗躍するのは醜いが、実質動かしているのも事実。2014/01/02
Amy
2
非常に興味深い。女優の岡田嘉子は初めて知ったが、ソ連に逃亡してスパイ容疑をかけられる人生なんて、波乱万丈すぎる。スターリンの粛清が最もすごかった時代で、一般の人のエピソードもすごすぎる。「レーニンとマルクスを引用してスターリンを引用しないある大学講師は密告されて逮捕」「読み書きのできない暖炉工 スターリンの顔一面に文字を書きなぐった新聞を隣人に発見され、反ソ扇動で10年の刑。」「モスクワ州 地区代表者会議 製紙会社の工場が拍手をやめると皆がやめて、工場長その夜逮捕。反ソ扇動で10年の刑。」2022/09/11
Hiroki Nishizumi
1
日ソ裏面史、夢中に読んだ。特に岡田嘉子恋の逃避行は詳しい経緯を初めて知ったので、興味深かった。共産党社会党の資金疑惑は何となくありそうな感じだ。シベリア抑留が北海道占領断念との引き換えであったとは知らなかった。歴史は学ぶものだと感じた。2018/10/24
じろう
1
著者はTVタックルなんかで見たことのあるちょっとオタクっぽいロシア研究者。古い本だが興味深い。人脈やつながりというのは世代を超えるから今も残っているに違いない。まあ自民党だってこの頃はCIAから援助してもらっていたのだからどっちもどっち。日ソ共同宣言の裏交渉役が河野一郎だったのははじめて知った。太郎ちゃんはどんな人脈を持ってるんだろう。アメリカ留学組だからロシアとの関係は残っていないんだろうか。2018/02/12