内容説明
東アフリカ原産の豆を原料とし、イスラームの宗教的観念を背景に誕生したコーヒーは、近東にコーヒーの家を作り出す。ロンドンに渡りコーヒー・ハウスとなって近代市民社会の諸制度を準備し、パリではフランス革命に立ち合あい、「自由・平等・博愛」を謳い上げる。その一方、植民地での搾取と人種差別にかかわり、のちにドイツで市民社会の鬼っ子ファシズムを生むに至る。コーヒーという商品の歴史を、現代文明のひとつの寓話として叙述する。
目次
第1章 スーフィズムのコーヒー
第2章 コーヒー文明の発生的性格
第3章 コーヒー・ハウスと市民社会
第4章 黒い革命
第5章 ナポレオンと大陸封鎖
第6章 ドイツ東アフリカ植民地
第7章 現代文化とコーヒー
終章 黒い洪水
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
75
『茶の世界史』と並ぶ、国際的商品と歴史の関係を綴った中公新書の名著と呼び声が高い書で、部分読みしていたものを通読。特に大陸ヨーロッパの市民革命期から現代に至るまでの様々なコーヒーを巡るエピソードは、その随筆調の筆致もあってテンポ良く、興味深く読むことができた。ただ気になるのは、本職が歴史でないためだろうが、産業革命を毛織物から始まったように書いたり、1992年の著作でありながら「オスマントルコ」の呼称を用いていること。そして『茶の世界史』に比べ、マルクス主義的な世界全体の構造的把握にとどまっている。2023/07/22
Gotoran
53
今や嗜好品とはいえ石油に次ぐ貿易高を誇るコーヒー。その起源から、中東から、西欧へ、そして世界へ、現代社会での消費まで幅広く論考されていて、世界史の中にしっかりと足跡を残していることを垣間見ることができた。スーフィズムのコーヒー、コーヒー文明の発生的性格、コーヒー・ハウスト市民社会、黒い革命、ナポレオンと大陸封鎖、ドイツ東アフリカ植民地、現代国家とコーヒーetc。コーヒーを巡る文明の興隆と革命の勃発を巡るエピソードが満載で、世界史をひとつの物語として、即ち純粋に読み物として愉しむことができた。2018/10/11
goro@80.7
46
コーヒーが辿った数々の道。カフェでは情報発信の場所として歴史を変えるきっかけとなったり、「二グロの汗」として暗い影を落としたり悲喜こもごもの話などなど。普段何気なく飲んでるコーヒーのこと何にも知らなかったわ。最後まで飽きない内容で満足。コーヒー好きな人は是非(^.^)2016/03/31
おさむ
44
毎朝飲むコーヒーが世界に普及するまでの歴史を描く新書。始まりはもちろんアラビア。起源伝説は山羊飼いのカルディ〈どこかで聞いたような店名〉。イギリスではコーヒーハウスが公共の議論の場となり、賑わった。そこでの営業税が国の重要な財源にもなった。その後はアルコールの代替として社会に浸透。健康に良いとの効果〈いまでもあるような〉に尾びれがついてさらに普及したという。国民的な飲み物になってからはその確保は戦争の帰趨を占うバロメーターにもなったとか。こんな面白い歴史を知ると、1杯のコーヒーが深い味わいになります。2020/09/29
かるかん
36
コーヒーの在庫がありすぎて最終的に処分方法としてコーヒー豆を燃料として汽車を走らせるという話に笑った。良い匂いが漂ってきそうだ。 しかし、よく具体的な数字が出てくるが、その単位が現在使われていないものや馴染みのないものが多いせいか、どれだけの量、値段なのかわからない箇所が多数存在した。 知らない自分が悪いのだが。2015/01/29