内容説明
太陽表面から黒点が消え去った。17~18世紀のことである。地上では経済活動が停滞し、ペストが猖獗をきわめた後、宗教改革が起こり、ルネサンスが始まり、科学革命が進んでいた。両者に関連はないだろうか?この時期の地球が「小氷河期」にあったことに着目した筆者は古記録、絵画などを渉猟し、古代の観察記録から最新の宇宙物理学の成果までを総合して、太陽活動が気候大変動を介して「近代」文明をもたらしたことを解明する。
目次
1 「小氷河期」の起源と発達
2 太陽の無黒点期と「マウンダー極小期」
3 太陽活動と近代文明
4 科学革命の時代(デカルトとパスカル;ガリレオの『太陽黒点論』;ニュートンとペスト)
5 歴史時代の太陽活動
6 太陽と気候
7 太陽は変わる
8 「小氷河期」と「核の冬」
9 太陽の未来
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
in medio tutissimus ibis.
2
中世という時代は「暗黒」イメージから寒々しい気候だと勝手に思っていたのだけれど、逆に温暖な時代だった模様。日本では京都近くまで海進したように、それが豊かさに繋がったどうかはまた別かもしれないが、中央集権から外れて諸封土諸地域ごとに自立勢力を創れた時代、と考えれば確かに豊かだったのかもしれない。それが、マウンダー小氷期(1640-1710)に寒冷化し、ペストの流行もあって欧州は転換期を迎える。既存体制への打撃は享楽的な観念とルネサンスを生み、科学時代の基礎となる諸発見を育んだ。核の冬は一週回ってタイムリー。2022/08/05