出版社内容情報
40年以上前の初夏、京都市郊外。きゃべつ畑で写生をしていた著者は、青虫狩りをするあしなが蜂に魅せられる。はたして彼らの巣はどこにあるのか……。あちらこちらの農家の軒下を探しまわり、ついに、比叡山の麓近くの田舎道に背を向けて建つ、一軒の納屋に行き着く。そこは、新しい巣と、ボロボロに破れた古巣が入り混じってぶら下がる「あしなが蜂の団地」だった――。ここから、一夏にわたるあしなが蜂の観察が始まる。卵を生み、丁寧に精緻に巣の部屋を作り修繕し、毎日餌を探して旅をし、団子にして幼虫に運ぶ。時には、襲ってくるすずめ蜂と決死の闘いをし、幼虫を狙う仲間のあしなが蜂を追い払う。孤軍奮闘する女王蜂たち。彼らに心を寄せた著者は、とうとう、母蜂不在の3つの巣を新幹線に乗せて東京へ運び、幼虫を育てることを決意する。渋谷駅から10分ほどのアパートで、新鮮な魚の刺身を団子にしてピンセットで与えられた幼虫は、成長し、繭を作り、働き蜂となって元気に活動を始める。やがて夏の終わり、来年の女王蜂になる雌蜂と雄蜂が誕生し、9月のある日、秋晴れの空に旅立っていった。彼らは空中で交尾をし、再び巣に戻ってくることはないのだ――。
8億年という生活史を持つ生きもの、その命の営みが感動的に描かれる。
内容説明
90歳の絵本画家がいま伝えたい、小さな昆虫の生命のドラマ。蜂の巣を持ち帰り、幼虫を育て―誕生から死までを見つめたひと夏の記憶。ベストセラー絵本『雑草のくらし』著者の初エッセイ。
著者等紹介
甲斐信枝[カイノブエ]
1930年広島県生まれ。広島県立府中高等女学校在校時より、画家の清水良雄に師事。慶応義塾大学で教授秘書として勤務後、童画を学ぶ。1970年に紙芝居『もんしろちょうとからすあげは』を出版、以後、身近な自然を題材にした科学絵本を手掛ける。5年にわたり、比叡山の麓で畑の跡地の観察を続けて描いた『雑草のくらし あき地の五年間』(1985年刊)で第8回絵本にっぽん賞、第17回講談社出版文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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けんとまん1007