箱の夫

箱の夫

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  • サイズ B6判/ページ数 221p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784120028663
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

夫を運ぶのにちょうどいい大きさの箱はあるかしら?“小さな”夫との奇妙で幸福な日々。しかし、ある日…。たしかな手ごたえを持っていたはずの現実が、ふとあやうくなる瞬間を鮮やかに描き出す、待望の作品集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

261
吉田知子は芥川賞作家なのだが、これまで全く知らなかった。倉橋由美子等とほぼ同じ世代に属するようだ。作風は大きく異なっているものの、彼らが纏う空気には近接感もまた感じられる。本書は'90年代に『文學界』などに掲載された短篇を8つ収録する。中でも最も注目するのは表題作「箱の夫」だが、ここには日常と非日常がさりげなく混在し、フォークロア風の物語世界を形作ってゆく。多和田葉子の「犬婿入り」を思わせる、というかそれに先行するものである。続く「母の友達」以下いずれも、それぞれに独特の物語が一人称語りで展開する。2015/08/07

メタボン

48
☆☆☆☆☆ シュールで不気味な吉田知子ワールド炸裂の作品集。いつのまにか主人と下女の関係性が入れ替わる「水曜日」が秀逸。赤ん坊のようになる発作を起こす箱に入る夫「箱の夫」。生きている人なのか幽霊なのか曖昧な存在が怖い「母の友達」。自分の死後は何も残すなという東堂の遺言状の始末「遺言状」。ガレージ整理のつもりが何でも持ち去られてしまう「泳ぐ箪司」。殺された自分について語る「天気のいい日」。朝鮮部落の墓にたどり着く「恩珠」。おぞましくも晴れがましいアマという民間伝承「天」。泉鏡花文学賞受賞作。2017/11/21

三柴ゆよし

31
再読。番茶くさい日常が突如として悪夢に変貌する恐怖。とはいえ、当の本人はそれが悪夢ということにも気付かず、どこでかけちがえたのかもわからない、狂った日常を生きている。世界がひっくり返るだけではなく、ひっくり返ったあとも世界は続いていく。それが怖い。「箱の夫」「母の友達」「泳ぐ箪笥」「恩珠」「天」「水曜日」など、どれをとっても佳作揃い。吉田知子円熟のエッセンスが詰まりまくったすばらしい短篇集なので、多くの人に手に取ってほしいのだが、惜しむらくは絶版。古書店で見かけたら買っておいて損はしない。保証します。2012/12/29

いちろく

28
な、なんじゃこりゃ!今の季節にぴったりだけれど、ホラーと単純に括れない所が魅力的な短編集でした。泉鏡花文学賞受賞作と後で知ったけれど納得。紹介感謝!2018/07/21

りつこ

23
川上弘美の書評を読んで気になっていた作品。奇想、ホラー、不条理に日本的な湿度がじっとりと。読みやすい文章なのに読むのがしんどくて時間がかかってしまった。ユーモアもなくはないのだが、笑ったあとにいやな余韻が残る。こんな作家が日本にはいるのだなぁ。絶版なんて勿体ない。2012/06/26

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