出版社内容情報
国難を逸早く察知する驚異の諜報能力。この男にソ連は震え、ユダヤ情報網は危険を顧みず協力した。命のビザに初めてインテリジェンスのメスを入れた傑作人物伝。
内容説明
国難をいち早く察知する驚異の諜報能力。この男にソ連は震えあがり、ユダヤ系情報ネットワークは危険を顧みず献身した―。日本の「耳」として戦火のヨーロッパを駆けずり回った情報士官の、失われたジグソーパズル。ミステリアスな外交電報の山にメスを入れ、厖大なピースを70年ぶりに完成させた本邦初の快挙。日本が忘れ去った英知の凡てがここにある。
目次
プロローグ 杉原の耳は長かった
第1章 インテリジェンス・オフィサー誕生す
第2章 満洲国外交部と北満鉄道譲渡交渉
第3章 ソ連入国拒否という謎
第4章 バルト海のほとりへ
第5章 リトアニア諜報網
第6章 「命のヴィザ」の謎に迫る
第7章 凄腕外交官の真骨頂
エピローグ インテリジェンス・オフィサーの無念
著者等紹介
白石仁章[シライシマサアキ]
1963年、東京生まれ。上智大学大学院史学専攻博士課程修了。在学中の1989年より、外務省外交史料館に勤務し、現在に至る。東京国際大学および慶應義塾大学大学院で教鞭を執っている。外交史とインテリジェンス・システム論が専門。特に杉原千畝研究は、大学在籍中からのテーマである(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
87
唐沢寿明さん主演の映画「杉原千畝 スギハラチウネ」が噂になっているので、世間話のタネに読んでみた。後世に名高い「六千人の命のビザ」が発給の舞台裏がわかります。映画で興味を持たれた方にどうぞ→https://www.youtube.com/watch?v=A5XcUyLqdAw2015/12/20
だいだい(橙)
20
最初は興味深く読み始めたのだが途中で盛り上がりのなさにがっくりした。恐らくは杉原が墓の中にまで持っていった事実がこれの倍以上あったことだろう。彼が救ったユダヤ人は、ドイツからでなくソ連から逃げていたこと。ソ連がドイツと不可侵条約を結んでポーランドをはじめとする多くの国を侵略したこと。日本に有用な情報が送られたが判断に活かされなかったこと。多くの外交官がドイツかぶれになり見る目が曇ったことなど。優れたスパイが一人いても、戦争に敗れ原爆を投下されることを防げなかったこと。その全てが残念でならない。2016/11/03
Kawai Hideki
20
6000人の命のビザを発行した杉原千畝の、インテリジェントオフィサーとしての仕事に光を当てる研究書。白系露人のネットワークに入り込み、ソ連の弱みを握って北満鉄道譲渡交渉を有利に進めたり、ポーランド将校との諜報網を通じてソ連とドイツの動きを日本に送ったり。また、独断で命のビザを発行した際は、本国からの命令に対して交渉時間を稼いだり、アリバイ工作までして、1枚でも多くのビザを発行し続けていたとのこと。杉原の他にも、戦争を食い止めたり早期終結を促したりしようとした外交官たちの奮闘と無念も紹介されていて興味深い。2013/08/25
紅咲文庫
13
外務省外交史料館勤務の著者は、プロローグでインテリジェンス活動について説明する。“地道に情報網を構築し、その網にかかった情報を精査して未来を予測していく、予想される未来において最善な道を模索していく“活動であると。そして杉原千畝がどれほどすぐれたインテリジェント・オフィサーであったかを丹念に伝えてくれる。一行一行に膨大な裏付けとなる資料の読み込みが、様々な解釈の精査がある。長年の探求の成果であることがにじみ出ている。杉原の動向を外務省とやりとりした電報のひとつひとつと、またその時代に活動していた→2022/07/29
なななな
11
まさにタイトル通りですが、「六千人の命のビザ」という話の背景にある、当時映画カサブランカのようだったリトアニアでのインテリジェンス・オフィサーという視点が興味深く読ませていただきました。2018/08/14