内容説明
だれもが認める20世紀建築における最大の巨人ル・コルビュジエ。でも、いったいどこがどうすごいのか?そもそもどこが巨匠たるゆえんなのか?安藤忠雄が「住宅」を切り口に、ル・コルビュジエの魅力に迫る。
目次
prologue 20世紀の巨匠たち
なぜ、ル・コルビュジエか?
17歳、なんとなく建築家―ファレ邸(1905‐1907)
壁がなくとも家はできる―ドミノ・システム(1914)
あまりに早すぎた大衆住宅―シトロアン住宅(1920(第1案)1922(第2案))
理性とドラマが葛藤する傑作―サヴォワ邸(1928‐1931)
集まって住む夢―ユニテ・ダビタシオン、マルセイユ(1945‐1952)
インドで風を見つけた―サラバイ邸(1951‐1955)
20世紀の遺跡―ロンシャンの礼拝堂(1950‐1955)
闘う巨匠を癒す場所―カプ・マルタンの休暇小屋(1951‐1952)
epilogue ル・コルビュジエの遺伝子
挑み続けた77年
著者等紹介
安藤忠雄[アンドウタダオ]
1941年大阪生れ。建築家、文化功労者。17歳でプロボクサーとしてデビュー。その後日本やヨーロッパでの放浪を経て、独学で建築を学び、1969年に事務所を設立。イェール大、コロンビア大、ハーバード大の客員教授を務め、1997~2003年東京大学教授、現在は東京大学名誉教授。1979年に〈住吉の長屋〉で日本建築学会賞、2002年に米国建築家協会(AIA)金メダルほか受賞歴多数
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感想・レビュー
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nobi
59
勢いのある文章、というより語りと言った方がいいか。安藤のコルビュジエに対する敬愛の念と彼の設計した建物を訪れた時の感動が真っ直ぐに伝わってくる。一気に読んでしまえる。コルビュジエに対する見方も変わった。直線的に構成され装飾を削いだ住宅は、日々生活を送るにはよそよそしく見える。しかしそれは壁と装飾に覆われた建物からの解放、旧体制からの解放、を望む気持ちをそれまでにない建築で実現しようとして、ではなかったか。その彼が殆ど最後に到達したのが彫刻のような内部は光の降り注ぐロンシャンの教会。完成時彼は67歳。凄い。2021/05/28
肉尊
49
待ち合わせをしているわけでもないのに過ぎ行く時間の経過に身を任せたことがある。それが上野の国立西洋美術館。世界文化遺産でお馴染みのコルビュジェの作だ。彼の魅力をもっと知りたいと思い本書を拝見。安藤忠雄が語るコルビュジェは建築家というよりも彫刻家に近く、「住宅は住むための機械である」という発言は人間らしさを追求した空間と解釈している。長沙では世界一工期の短い(29時間)11階建てマンションが話題となっているが、画一化された商品としての建築物が増加する分、芸術家の手による勇気ある住宅にも学ぶところは大きい。2022/12/01
zirou1984
35
ル・コルビュジエの入門書としては文句なし。豊富なカラー写真は建物の内部を撮ったものも多く、住宅の住み心地についてもイメージし易いものとなっている。内容としては写真が中心の100頁少しの本であり、安藤忠雄の解説も語り口調でわかりやすいことしか述べていないが、ル・コルビュジエの凄さについて間口がきちんと開かれている。ユニテ・ダビタシオンの集合住宅の意図や構造については面白く、実際に住んでみたいと思えてくる。西洋ではレンガ造りが主流なため、鉄筋コンクリートへの抵抗感が強かったというのは日本にはない視点だった。2015/10/20
かっぱ
27
【図書館本】安藤忠雄が語るコルビュジエ。やはり若い時に感銘を受けたものの影響は知らず知らずに受けているものだと思わされる。安藤建築の中にコルビュジエを見たという印象。コルビュジエは無理でも、安藤さんの建築なら日本にいながら見ることができるので、もっとたくさんの実物に接してみたいと思った。2014/05/05
ネムル
8
「スロープをのぼってゆくと、最初は暗く、それがだんだん明るくなり、最後は屋上に出てパーッと外の景色がひらけます。どうみても、合理的な機能というより、ドラマティックな空間を演出する装置なのです」、ル・コルビュジエの建築はフォトジェニックなだけに写真を眺めるだけでも面白いが、その魅力を上手く伝える安藤忠雄の文章も良い。特にスロープについての記述は単純ながらも納得した。特に意識してこなかったインドのサラバイ邸について、頁を割いてしっかり紹介しているのもまた印象的。2015/11/12