スーパー・カンヌ

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  • サイズ B6判/ページ数 382p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784105414023
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

銃声が静寂を破り、ビジネス・エリートたちの超楽園に闇が、ゆっくりと、口を開く―現代文学の巨人が挑む人類の未来、ミステリの快楽。

著者等紹介

バラード,J.G.[バラード,J.G.][Ballard,J.G.]
1930年、上海生まれ。46年にイギリスに帰国し、大学卒業後、サイエンス・ライターなどを経て、56年にSF作家としてデビュー。人間の心理を災厄的なSF的異世界の内にとらえた『沈んだ世界』(62)、『結晶世界』(66)など、それまでのアメリカSFには見られなかった思弁性、文学性で独自の地位を築く。70年代にはさらに、現代の科学・テクノロジーと人間精神との関係性を考察する『残虐行為展覧会』(70)、『クラッシュ』(73)といった実験的前衛作品を次々と発表、同時に、新しいSFを探求する“ニューウェーブ運動”の理論的先導者として、映画や音楽、アートなど、SFにとどまらない多様な領域に大きな影響を与えた。84年には、のちにS・スピルバーグ監督によって映画化される自伝的小説『太陽の帝国』を発表。90年代以降は、『コカイン・ナイト』(96)、『スーパー・カンヌ』(2000)と、エンターテインメント性にすぐれながらも、時代の精神病理を鋭くえぐる、さらに新しい小説世界の探求を続けている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

60
エデン・オランピア、ここはとってもいい所。ガラス張りの高層ビルが立ち並び、娯楽に溢れ、ここで買えないものや手に入らないものは何一つ、ない。だけど静かすぎる程、穏やかで消毒液の匂いがしそうなのに権力者は公然と下級階級や外部から出稼ぎにきた人々を暴力や破壊で押さえつけ、楽しんでいる。それはこの街があまりにも退屈だからだ。だから人は退屈の対義語である興奮を求める。それがどんなにアンモラルなものであっても。ラッセルの『幸福論』での論理を連想するような都市的ディストピア。エデン・オランピアはこの国にも萌芽している。2015/09/11

スターライト

7
南仏に実在する街「スーパー・カンヌ」に先進的なビジネス・パークを築き上げたバラードが本書で描くのは、現代人が正気を保つためには狂気が必要であるという恐るべきヴィジョンだ。しかし考えてみると、僕たちは人生に達観した僧侶ではないのであり、残念ながら世の中には理不尽なことや悪意が渦巻いている。そのような中で正気でいるためには、バラードのいうような狂気に陥る瞬間が必要なのかも知れない。珍しくミステリ仕立てとなっている本作品で主人公が最後にとる行動には、思わず感嘆(不謹慎?)。たしかにラストはこう締めくくるしかない2011/09/19

roughfractus02

6
企業に完全管理された都市には善悪の彼岸を与えられたエリートたちが住む。生産性の名の下に監視される彼らは心身の健康を害している。妻の就職でこの都市に来た主人公は、妻の前任者の不可解な死を探りながら、この都市の異様さに辿り着く。前作と類似したプロットだが、正気の管理と狂気の自由の関係は本書では資本主義システムとさらに緊密だ。警備会社が仕組む不道徳行為とそれを罰するエリートたちの自警団的暴力行為は、生産性を上げるための医学的処方となっている。が、都市の規模が大きくなるにつれて、管理と自由のバランスは崩れて行く。2020/11/11

MOTO

6
コカインナイトの続編?と言われてる本作スーパーカンヌ。前作同様のテーマを掘り下げた内容となっていて、個人的にはこちらの方が好きだったりする。SFというよりはサイコサスペンス。現代人、現代都市に巣食う人々の病的な心理や狂気を書かせるとバラードの右に出る作家はそうそういないと思う。それにしても相変わらず読んでるとすごい疲れるな…2014/11/28

澤水月

5
「未来のアドルフ・ヒトラーやポル・ポトは砂漠から出てきはしない。ショッピングモールやビジネスパークからこそ連中は現れるんだ」。コカイン・ナイトと併せ読みたい傑作2012/01/21

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