出版社内容情報
逃げた父はオルガニスト。刺青師の母は幼子とともに後を追って北海の国々へ。父を知らぬ息子は、やがて俳優になり―。最長最強の大長篇、待望の翻訳。
内容説明
小学生時代から、女役もこなす男の子として演劇の才能を発揮したジャックは、アメリカに渡り、女ったらしの二枚目俳優となる。ジャック5歳のとき12歳だった親友のエマは、長じて人気作家に。二人はおさわりしあうだけの清い関係のまま、ロサンゼルスでともに暮らしはじめる。やがて手にするハリウッドでの栄光と、それでも満たされない心。腕のいい刺青師としてならした母亡きあと、ジャックはふたたび、不在の父を探す旅に出る。三十年ぶりに再会した北の街の刺青師、音楽家、娼婦たち…。そしてジャックがついに知ることになる愛は、思いもよらないかたちをしていた―。現代アメリカ文学最高のストーリーテラーによる、愛と幸福、記憶をめぐる物語。作家が全人生を賭けた自伝的長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tom
23
上巻は母が作った物語。そして、エマが死に母も死んだ後になって、主人公は少しづつ、父のことを調べ始める。そして明らかになったことは・・・という物語。アービングを読むのは、物語を楽しめるということと同義。こういう楽しい読書体験をすることは、なかなか得難い感じがある。今の歳になって、アービングを知ったことは、なかなか嬉しいこと。それにしても、母の葬儀の光景、これはよろしかった。コロナ禍のなかで読んだのは、未亡人、オーウェン、そしてこの本。次は何を読んだら、幸せになれるかしら。2020/10/18
mak2014
3
後半は母アリスの死以降、一転して父親探しと子供の頃の記憶の再検証。前半の母との父ウィリアム探しが、実は……と母による記憶の操作というか間違ったイメージを植えつけられていたことがわかり、ジャックのみならず読んでいるほうもショックを受ける。アリスのキャラが魅力的であるだけになおさら。読んでいてジョン・ル・カレをしばし想起。ウネウネと曲がった道を行ったりきたりしながら進んでいくストーリー。ル・カレの『パーフェクト・スパイ』を意識したのではないだろうか。2016/08/04
まさやん80
2
アーヴィングらしい大長編。 アーヴィングの自伝的要素が濃い作品だが、上巻で展開したヨーロッパ旅行の思い出を、下巻で見事にひっくり返しながら、主人公は母親の影響から逃れ、ついに父親と再会する。主人公の性遍歴、刺青、レスリングと、奇妙だが愛おしい物語が展開される。確かに長い作品だが、アーヴィングらしい楽しさと哀しみにあふれた傑作だと思う。全く退屈しないで、一気に読んでしまった。2021/09/20
HIROMI S.
2
アーヴィングには珍しく、作品に入り込むのに苦労した。間に別の小説2冊を挟んで、やっと読了。「あの河のほとり」に感動して、またアーヴィングを読みたくて購入したんだけど、うーん、「あの河」の感動には及ばなかったな、私的には。いや、本当によく出来てるし、面白いし、でも、なんだろ、相性かな?ちょっとガープに似てる感もあって、そう言えば私はガープもちょっと苦手だったんだ。ペンショングリルパルツァーはとても好きなんだけど。と言うわけで、エマの書く小説も読みたかった。2018/02/23
s_n
1
長かった…久しぶりに達成感ありました。言うまでもなくアーヴィング丸かじり。アーヴィングの描く父性というのが作者が歳をとり子供が成長したことで幾分変化した、というか、今回は自らの過去をフィクショナルに開陳するのかなと思っていたら、最後で思う存分子供への愛情を描いていた。2017/11/18