出版社内容情報
景気刺激のため先進各国が刷りまくる紙幣。現状を担保する「政府の信用」が崩れたとき、世界経済は──。ドイツが辿った最悪の過去が暗示する近未来。
内容説明
日本が背負う多額の震災復興資金。財政秩序と金融節度が限度を超えたとき、貨幣は価値を失い、国は死ぬ―。財政破綻国の過去が警告するこの国の「明日」。
目次
金を鉄に
喜びなき街
突きつけられた請求書
10億呆け
ハイパーインフレへの突入
1922年夏
ハプスブルクの遺産
秋の紙幣乱発
ルール紛争
1923年夏
ハーフェンシュタイン
奈落の底
シャハト
失業率の増大
あらわになった傷跡
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
7
1975年初出。経済苦が英雄出現の待望(池上彰氏8頁)。独裁者も人を平気で洗脳できるようになってしまう恐ろしさを感じる。まるで今の安倍首相のように・・・。経済病理の恐ろしさは、じわじわと影響が及んでいく。ドイツ人がEU経済を牽引しているのは史的教訓が骨の髄にまで達しているから短時間でも高生産性を上げる仕事をしてこれたのではないかと思った。「国じゅうの農家の納屋に売られていない食糧があふれていたにもかかわらず、ドイツには飢餓が蔓延」(246頁)。これは将来のTPPで円安、増税による物価↑で在庫過剰の消費像?2013/04/08
maimai
6
第一次世界大戦後のドイツを襲ったハイパーインフレは国家を破綻させてナチスの台頭を導いた。 貨幣はあくまで交換手段であり貨幣自体に価値があるわけではないという原則を見誤ると、貨幣が有ればいいという考えが広まりインフレーションが発生する。 ハイパーインフレの怖さは大量の失業者の増加+貨幣に対する信頼の喪失というように国家を破綻させてナチスのような独裁構造を生んでしまう恐れがある。いま日本はドイツと同じ状況に瀕していると考える。ハイパーインフレ、ナチズムとあらゆる社会事象に面しているのが日本であるのだろうか、2020/12/14
あんさん
4
ドイツ、オーストリア、ハンガリーのハイパーインフレの状況がわかる。この経験は人類が共有すべきものだ。1913年には独マルクは、英シリング、仏フラン、伊リラとほぼ等価だった。10年後マルクは1兆分の1に下落した。最初はゆるやかに、やがて転げ落ちるように・・・。インフレが始まった日本だが、将来の万が一のため、現物資産も多少持っておいたほうが良いのかも、と思わされた。2022/05/26
トリオネア
2
抜粋・夫人「ええ、でも、わたしが持っているのは政府の証券です。いちばん安全な証券でしょう?」行員「奥様、その証券を保証してくれる政府はどうなりました?死んでしまいましたよ」抜粋ここまで。日本は今、単純なデフレなのか、それとも不況下のインフレであるスタグフレーションなのか。私が幼い頃、国にお金がないなら刷ればいいじゃないと大人に言った事があるが、そうすればどんな状況になり、どのような危険性、デメリットがあるのかは大人であれば理解できる事である。2019/01/10
puapua
2
ドイツのハイパーインフレが起こった当時の経緯・状況が著されている。印象的であったのは、徐々にインフレが進行し、ラストは急速にスピードを早め、天文学的な数字に跳ね上がったこと。多くの国民が困窮する中、インフレの状況をうまく立ち回り、財をなすものも現れたこと。組合の力が強い労働者は比較的インフレ下でも経済的にはましだったこと。国の誰もがインフレの原因がわかっていなかったこと。色々と示唆に富んでおり、ハイパーインフレという異常な状況を知るには良い一冊。2015/05/06