出版社内容情報
僕たちはあの街で出会い、恋をし、そして別れる。次の街へ行くために――十年の歳月をかけて書きためた、永遠に「失われない」場所がきらめく短編集。
内容説明
東京、大阪、ソウル、そして記憶の中にしか存在しない街―戸惑い、憂い、懼れ、怒り、それでもどこかにある希望と安らぎ。あらゆる予感が息づく「街」へと誘う全十篇。
著者等紹介
吉田修一[ヨシダシュウイチ]
1968年、長崎県生まれ。法政大学経営学部卒。1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞。同作が第117回芥川賞候補となる。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を受賞、2007年『悪人』で大佛次郎賞と毎日出版文化賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kana
51
漫画家は背景をアシスタントに任せたりするけど、小説家はそんなことはもちろんできない、孤独な職業だとどこかで読んだけれど、小説表現の巧みさはそうした何気ない風景描写に凝縮されていることが往往にしてありまして。著者はまさにそのタイプで、だからこそ私はこの人の描く作品がとても好きです。多分そういう話じゃないし盛り上がるタイミングもそこじゃないのに、急にどうしようもなく切なくなって泣きそうになるんです。街に刻まれる、なんてことない人々の日常。でも妙に忘れられない瞬間を切り取ってアルバムにしたみたいな短篇集でした。2018/12/30
nyanco
30
個人的に好きなのは『深夜二時の男』、好感が恐怖に変わる、何処にでもある隣り合わせの不安と、娘のエピソードのバランスが良かった。『奴ら』と『大阪ほのか』も、キャラクターの描き方が良い。10年にわたり文藝界からan・an、web小説まで発表の場も様々なので、あんなのもこんなのも書けちゃうんだ…と吉田さんの多才ぶりを知る一冊。何とも素敵な装丁。カバーごとラッピングされてしまう図書館本、何とも勿体ない…と思ったら、地図がコピーして添付されている。この頃、図書館もなかなかヤルナ!って感じで嬉しい。2009/09/02
kyon
26
短編集でした。繋がりがあるのかなーと思っていたら、バラバラなお話しでした。やっぱり、表題作が、一番好きかなー。軍艦島に行きたくなりました。2017/04/29
Satomi
25
短編10篇。他愛もない日常、何かが始まるような、動き出しそうな所でシャッターを急に閉めらる。唐突に物語は終わる。ハッピーな未来を想像できるものもあれば、えっーっと…!???理解出来ないものもある。「日々の春」新入社員と先輩のこれから恋が始まりそうな雰囲気が良かった!!2014/08/18
chiho
22
ある人の日常の1部をパスッと切り取った感じ?その後を想像し楽しむという想像力の乏しい私には起承転結がよく分からないモヤモヤの残る1冊でした。2016/09/23