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いつか王子駅で

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  • サイズ B6判/ページ数 164p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784104471010
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

路面電車の走る町。「珈琲アリマス」と記された小さな居酒屋。隣で呑んでいた正吉さんは、手土産のカステラを置いたまま、いったい何処へ向かったのか?―荒川線沿線に根をおろした人々とあてどない借家人の「私」。その日日を、テンポイントら名馬の記憶、島村利正らの名品と縒りあわせて描き出す、滋味ゆたかな長篇。

著者等紹介

堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年、岐阜県生まれ。明治大学助教授。1999年『おぱらばん』(青土社)で第12回三島由紀夫賞を、2001年『熊の敷石』(講談社)で第124回芥川賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

クリママ

51
読点少なく、長い一文。主人公を囲む好感の持てる人たち。昇り龍の正吉さん、居酒屋かおりの女将、大家の娘の咲ちゃん… 「私」は翻訳を生業とし、気に入った古本を集め、生活のために塾講もしている。昭和の競馬馬の話もずいぶん出てきて懐かしい。文学作品の引用もあり、また、普段あまり使わない言葉にもこういうときに使う言葉なのかなどと感心し、日々の何気ない回想であるのに、文学の香りを嗅ぐ。終章に明るい未来を見、その題名の素敵さに気づく。2020/02/03

よこたん

43
“人の仕事が天職かどうかを知るには やっていることを見る必要はなく、ただその人の眼を見ればよい” 堀江さんの作品は、いつもさらさらと流れる美しい文章を心静かに堪能する印象なのだが、今回は最終章の「動」の展開に、思わず爪先立って共に勝負のゆくえを追い、晴れやかな清々しい気分で本を閉じた。昭和の下町のつつましやかで、まっとうな暮らしを営む人々。ふらふらしているようでも、大丈夫。ちゃんと地に足はついている。カステラを置き去りにした主も、きっといつの間にか帰ってくるはず。銭湯にまだフルーツ牛乳はあるのだろうか。2018/09/18

27
路面電車の走る東京の下町で、時間給講師として働く私の平凡な日常を描いた小説。やけに競馬の話が多いなと思っていたら、「書斎の競馬」という雑誌に連載されていたものらしくて納得した。昭和の名馬たちや古書の私語りが多く、別にメッセージ性があるわけでもない穏やかな日々。この私と『なずな』の私は同一人物なのだろうか。私の名前が明かされていないため真相はわからないが、東京で時間給講師として働いていることから同一人物でもおかしくない。これくらいの短さで穏やかな日常を描く方が、飽きずに楽しめるかなと感じた。★★★☆☆2021/05/11

mm

15
前半は、作品と呼吸が合わなくてちよっと苦戦。後半は乗り切れた。読後やたら解説したくなる作品。キーワードは「待つ」「走る」「移動と回遊」「誰と何を食べるか」「視線の移動」「言葉ののり代」これに作中で引用されているマイナーな小説家の作品についての紹介を加えれば、レポート1本かけますな。終わり方はとても好みで、ちょっと泣けた。2014/11/10

Bartleby

12
「変わらないでいたことが結果としてえらく前向きだったと後からわかってくるような暮らしを送るのが難しいんでな。」主人公の日常や過去の思い出、読んだ本のこと、そして周りの人々の姿が淡々と描かれる。大きな出来事はなにも起こらないのに、読んでるだけで楽しい。心地いい文章にひたり、今度はそれに触発されて自分の記憶や想像が広がっていく感覚を味わう、そんな風に時間をかけて読んだ。2012/11/17

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