出版社内容情報
小さな古道具屋に集う人々のちっともかっこよくない恋愛。世代をこえた友情。どこかあやしい常連たち。ゆるりとした空気感がたまらない待望の新作長編。
内容説明
東京の西の近郊の小さな古道具屋でアルバイトをする「わたし」。ダメ男感漂う店主・中野さん。きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ。どこかあやしい常連たち…。不器用でスケールちいさく、けれど奥の深い人々と、懐かしくもチープな品々。中野商店を舞台に繰り広げられるなんともじれったい恋、世代をこえた友情。幸福感あふれる最新長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
pino
210
するすると読めたけど、閉じた本が一方の手に乗ったままの状態を一年間、保っていたような気がする。中野商店に、浮世離れした人が、一人、二人、三人…。若い人の熱いのか冷めてるのか分らない恋愛話に、ありそうでなさそうな大人の色恋話が、差し迫るふうでもなく、ゆるゆると。と、思ってたら、とんだエロが、ぽつぽつと。油断してたら、そうきたか。中野商店の主人をはじめとする登場人物たちが深すぎず浅すぎず関わっている様が、なかなかいい。アサッテの方を見てるようで、まとまっている。物語で一番、冷静なのは、古道具たちかもしれない。2014/01/18
nz
51
じんわりあったかくなる、いい作品でした。好き嫌いは分かれるかもだけど私はすごく好き。川上さんの使う言葉たちがいい。情景がそのまま浮かんでくるような文とか、いろんな人の心情を表す言葉とか。サキ子さんの書いた「小説みたいなもの」をぜひ読みたいですねー笑。全体的に江國さんを連想させる感はありますが、やっぱり好きだなー。2014/05/20
万葉語り
41
中野商店に勤めるひとみさんが主人公。店主の中野さんやアルバイト仲間のタケオ君やお客さんたちとの日常が書いてあるのだけれど、古き良き時代の人間関係が心地いい。常識的には不倫に当たる関係も川上さんの文章の中では、普通の関係として受け止められる。これは面白かったので、再読したい。2014/07/27
ほほほ
39
「センセイの鞄」を思い起こすようなまったりとした長編。でも二人だけの世界の恋愛ものじゃなくて、登場人物たちが古道具屋さんを営む日常の中で、それぞれの恋愛をほんのり見守りあうようなお話。恋愛一辺倒じゃないのが心地よかったです。出てくるのは20代から50代までの男女。若い人たちの不器用さはリアルで寂寥感が漂ってるのに、したたかにとぼけた年配の姉弟が良いです(笑)特にお姉さんのマサヨさん、あんな知り合いいたらいいなぁ!!川上弘美さん作品の中では今のところ一番です^ ^特別な本になりました。2014/07/10
mint-s
37
中野商店での日々。店主の中野さん、姉のマサヨさん、従業員のヒトミさんとタケオ。それぞれマイペースで淡々とした感じがいい。でも、恋をすると、みんな「好き」な思いでいっぱいになってしまう。当たり前だけど恋に男も女も年令も関係ないんだなぁ。2016/07/22