出版社内容情報
上京して四十年。初めて帰郷する私を暖かく迎えたのは、見知らぬ〈母〉だった――新しい家族とふるさとの形を描く、感動の最新長篇!
内容説明
家庭も故郷もない還暦世代の3人の男女の元に舞い込んだ“理想のふるさと”への招待。奇妙だけれど魅力的な誘いに半信半疑で向かった先には、かけがえのない“母”との出会いが待っていた。彼らが見出す人生の道しるべとは?あなたを迎えてくれる場所が、ここにある。至高の名作誕生!
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で第16回吉川英治文学新人賞を受賞。以降、『鉄道員』で97年に第117回直木賞、2000年『壬生義士伝』で第13回柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で第1回中央公論文芸賞・第10回司馬遼太郎賞、08年『中原の虹』で第42回吉川英治文学賞、10年『終わらざる夏』で第64回毎日出版文化賞、16年『帰郷』で第43回大佛次郎賞を受賞するなど数々の文学賞に輝く。また旺盛な執筆活動とその功績により、15年に紫綬褒章を受章、19年に第67回菊池寛賞を受賞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
346
浅田 次郎は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。今の時代を映したユニークな設定で面白く読み進めたのですが、最期失速しました。こういうサービスが出来るのは、アメックスのチタンカード位でしょうか? 私は、なんちゃってゴールドカードしか持ったことがありません(笑) https://www.shinchosha.co.jp/special/hahanomatsusato/2022/03/04
ALATA
225
「今日、会社からの退職金の振込がありました。長い間御苦労様でした」と渡される離婚届。所詮、妻は他人なのか…母の待つ里に帰りたくなる。会費35万円「ふるさとを、あなたへ」プレミアムクラブに縋りつきたくなるのもわかる。いつの間にか背を追い越し、小さくなった母を見ていた自分が懐かしい。ツナグにもあったが会えるとすれば会いたいものだ★4※母親の記憶は味付けの濃い「卵味噌」と共に一生消えない。そして、ちよさんにもちょっと会ってみたい。2023/03/01
R
212
小説の骨格は人情話で、郷愁と母への想いを描いたよくある話なんだが、SFっぽいというか、すごく現代的なエッセンスをまとっていて面白かった。VR、体験型イベント、AIとかそういう装飾で物語が進むのに、結局描いていたのは感情の在り方で、大切なものは情動というか、自分がどう感じるかというその一点だけなのかもしれないと思ったりした。喪失とか、感傷とか、そういったものが人間の真ん中にあるのかもしれないなんて思った。2022/12/12
修一郎
207
浅田次郎さん御自身の生まれ育ちは東京下町なんだが思い浮かべる田舎は東北の北上地方なんだとか。昔娘さんが岩手の大学に行っていたご縁だそう。この心地のよいおもさげながんす言葉は壬生義士伝以来,花巻弁と盛岡弁、遠野弁をミックスして作った言葉だとか。描かれる田舎のお母さん像はその不便な雪深い環境も含めてある種理想のふるさと像だ。こんなに息子娘にやさしいおかあさんはファンタジーだ。やっぱり最後は泣けました。こういうエピローグは典型なんだろうけどもそれでもやっぱり泣けました。浅田節堪能。2022/10/27
とろとろ
185
家庭も故郷もない還暦世代の3人の男女。共通点は一般人には手の届かない高価なカード会員だったこと。そのサービスとして「理想のふるさと」へ招待されるという。最初はなんの話かサッパリだったが、その故郷に設定された限界集落で暮らす「母」との出会いを、それぞれ登場人物が章ごとに経験を語るという切り口で、話が一通り終わると、このサービスの内容が読者にも理解できるような仕掛けだったのね。この「母」が突然亡くなってサービスは終了してしまうのだが、その葬儀の際にはちょっとウルっとしてしまった。良かったんじゃないでしょうか。2022/06/23