内容説明
内なる江戸を紙上に現出させようとした岡本綺堂の「半七捕物帳」。文学への屈折した思いを搦め手からの世相の描出に賭けた佐々木味津三の「右門捕物帖」。〈法のユートピア〉を形作ろうとした野村胡堂の「銭形平次捕物控」―草創期の三大シリーズを題材に、大衆文学の一大人気ジャンル“捕物帳”の世界を徹底的に解剖する。“捕物帳”の誕生と変遷を時代との関わりの中に検証した大衆文芸評論の画期的収穫。
目次
1 捕物帳はなぜ書かれたのか
2 捕物帳ということば
3 「時計のない国」への招待
4 ミステリーとしての『半七捕物帳』
5 半七老人から三浦老人へ
6 『半七捕物帳』の終焉
7 大衆作家以前
8 右門は何故むっつりなのか
9 『右門捕物帖』の世界
10 味津三、黙して逝く
11 胡堂富士を見る
12 平次誕生
13 法の無可有郷(ユートピア)
14 幻想の江戸を支えるもの