内容説明
向う岸に歩み去ろうとするあの人。一瞬ふり返って交す視線と視線。二人で持った心の軌跡が、稲妻のように脳裏を駆ける。もう一度、もう一度だけでも逢うことがかなうなら―。稀代のヒネクレ者・志水辰夫が、一切のケレンを振り払ってド真ん中に全力投球した九つの熱球、九つの感動。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
80
メメント3.11に参加するために選んだ1冊。「死」に向き合う物語が並んでいる。死によって人の目に触れてしまう思いや、数年後亡くなった相手に対して思いを馳せるとか「死」に直面するときには通り一遍の思いではなく時間を巻き戻して耳元に相手の声が聞こえてくるようだ。震災では今もなお多くの人が目の前から消えてしまった人への想いを抱え苦しんでいる。それは、待つ場所がなくなってしまったからかもしれない。家も墓も、故郷も。帰っておいでと呼び掛けられないもどかしさもあるかもしれない。身内友人知人の死は胸が痛む。2013/03/12
ばりぼー
36
20年ぶりの再読。様々な向き合い方で「死」をとらえた短編集。第13回日本冒険小説協会大賞短編部門大賞。とにかく叙情的な描写のうまさには目を見張ります。下手くそな方だと、「彼(女)は余命半年と宣告された」などという身も蓋もない説明をして情趣をぶち壊してしまうものですが、「死」という言葉を使わずに、友人が死んだ後の喪失感や、自らの死期を悟った中年男の決意や、死を目前にした肉親との心の交流などを鮮やかに描き切る筆力はさすがです。これぞシミタツ節!書いてあることしか理解できない方にはお薦めできません。2014/04/25
冬薔薇
5
いつ読んだのか、内容もすっかり忘れている。初読みと同じ。五十を過ぎた男性の過ぎ去った時、黄昏迫る今、哀感こめて綴られる短編集。人生も終わり近くに呼んで正解。「七年のち」「いまひとたびの」に泣かされる。「失くしたものは絶対忘れない」「過ぎてみればすべて幻」自分の昔を振り返ってしまう。2020/06/03
Nori
1
「死」にまつわる短編集。個人的に『赤いバス』、『七年ののち』、『忘れ水の記』が特に好きでした。2021/05/01
雲國斎
1
初読みの作家さんだった。しんとした短編集。2000/07/05
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- 和書
- 歩くひと 小学館文庫