海峡の光

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海峡の光

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  • サイズ B6判/ページ数 159p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784103977032
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

少年刑務所で看守として働く「私」の前に現れた一人の受刑者。彼は子供のころ「私」を標的にして執拗に繰り返されたいじめの煽動者だった―。第116回芥川賞受賞作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

抹茶モナカ

28
学生時代に主人公の斉藤をイジメた主犯の男・花井が、成長して刑務官をしている斉藤の勤務勤している函館少年刑務所に収監されて来る。イジメの心理、主従の心理が複雑に交錯する心理ドラマ。服役する花井の謎の行動は、常に斉藤を支配し続ける。時折、難しい単語が小石のようにポツンとある文章は、上手いのか、下手なのか、わからなかったけど、着地点が楽しみで読み進めてしまった。それだけ、イジメっ子の花井の造形に成功している、という事か。2016/02/10

James Hayashi

20
青函連絡船の廃止の前に船員を辞め、刑務所の刑務官になった主人公。その彼の前に受刑者として現れたのは元同級生の花井ーイジメの張本人。この二人の関連性を主人公の立場から緻密に描写。陰のある冬の寒さを感じさせる文章ながら、非常に読みやすい。しかしストーリー的には、花井の本意が分かりづらいし、結末も把握しきれなかった。読み応え十分で、90年代半ばに芥川賞受賞に頷ける作品。辻氏の作品は4冊目だと思うが、これはイチオシ!2014/09/06

紅蓮

18
私も花井の生き方を考えたことがある。それは実はなんと寂しいことか。 (p109)この小柄な若者はかつての私よりもずっと惨めだと、その時私は思っていた。またそう優越することで私は過去の自分を慰めることもできた。つまりは私達自身も、花井が整えたピラミッド型の秩序に知らぬ間に組み込まれ、精神の浄化を享受してきる一人であったのだ。花井が花井らしさを開花させていくのを1番喜んでいたのはこの私ではないのかと時折ふと考えては、愕然とした。そう考えると、まるで私こそが花井に操られている張本人のような気がしてならなかった。2016/08/31

mafuu

15
芥川賞を受賞作との事。辻さんの本は多分『サヨナライツカ』しか読んだことがないと思う。終始暗い雰囲気で刑務所での話なのに割とすんなり読めた。幼少のころの記憶というのは大人になっても蘇り、その時感じた屈辱は心から身体からも消えないものだと思う。大人になり転職先で出会った見る影もない服役囚である級友に複雑な思いを感じ、図らずも縛られる主人公。刑務所に入ってその身の自由がきかない花井の方が心の開放があるのかもしれない。2016/06/13

てんちゃん

15
最近の離婚騒動でテレビへの露出の多くなった辻さんに関心をもって着手。テレビでみる雰囲気と違ってずっしり重い内容に驚きました。でも、文章は独りよがりな感はなく、読みやすいです。陰鬱な閉塞感、海峡の光のなかに交差する希望と絶望。芥川賞らしい作品です。自分は結局花井という人物を掴みきれず読み終えてしまいました(T-T)2014/09/06

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