出版社内容情報
遺作。あまりに早すぎる絶筆。葉桜の季節に突然いなくなってしまった君――。
4月11日、35才でこの世を去った鷺沢萠さんが生前からすでに構想していた同じテーマの3つの物語。最後の1篇は未完だが、愛用のパソコンから発見された2種類の冒頭を掲載。また絶筆となった恋愛小説も未完ながら収録。生きること、考えること、そして書いてゆくことに誠実だった作家。夭逝した早熟な才能が惜しまれる遺作。
内容説明
2004年4月11日、35歳で急逝した鷺沢萠が生前から構想していた、一つの主題に貫かれた三つの物語。最終篇はパソコンに遺され未完に終わった。また、自身の高校時代を描いたと思われる絶筆も未完ながら併録。18歳のデビューから、生きること、考えること、書くことに走り続けた作家が最後に遺した小説集。
著者等紹介
鷺沢萠[サギサワメグム]
1968年、東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語科除籍。’87年、18歳の時に「川べりの道」で文学界新人賞を受賞。「葉桜の日」などで芥川賞候補に、「ほんとうの夏」などで三島賞候補となり、’92年『駆ける少年』で泉鏡花賞を受賞。2004年4月11日逝去
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感想・レビュー
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ひめか*
59
鷺沢さんの最後の小説らしい。未完成も含め4つの物語を収録。未完作品は続きがどうなったのか気になる。まだまだこれから物語が動いていくのに残念…在日朝鮮人のお話が主。自分が韓国人であることの嫌悪感、成長とともに変わっていくその時その時の複雑な心情が伝わってくる。好きなのは「眼鏡越しの空」。チュー先輩カッコいい。借りた本に付いていた図書カードに先輩の名があったこと、美蘭が奈蘭に渡してくれたCDが運命的で素敵☆こういうの憧れ!本名書きてえッって気持ちもすごくわかる!読後が優しく読者をほっこり包み込んでくれます。2014/06/04
あつひめ
21
鷺沢さんの作品を年を追いながら読んできた。完成される事のなかった作品。居場所を確保したかった・・・それはもしかしたらその時の鷺沢さんの心境とシンクロさせているのではないかと深読みしてしまったり・・・コレばかりは鷺沢さんにしかわからないことですね。今の世の中を見たら鷺沢さんはなんと言うか・・・あの毒舌トークぶりのエッセイで書き表してほしかった・・・。2010/07/03
ひなきち
18
紹介頂いた本。純粋で瑞々しくて…この「感覚」をこれからも大事に持ち続けたいと思う小説だった。…心が洗われるというか、清々しくて気持ちが良かった。著者が亡くなり、文章が途切れた未完成の作品もあり…。この寂しさは、青春の終わりに似ているような気がした。上手く言えないけど「あのころ」という、ひとつの時代が終わってしまった…みたいな。出会えて良かった…。そして改めて聞きたい曲ができた。2019/03/27
いちの
8
名前に、国籍に、育った環境に。誇りを持つことと排他的になることは表裏一体なのかも、と気付かされた。鷺沢萠さんの未完成2作品、このあとどんな展開をする予定だったのかすごく気になる。2017/03/07
ケンサク
6
鷺沢さんの本をたくさん読んでいたのは、10代後半から20代中盤の頃。亡くなったの同時期に社会人になったため、ほとんど読まなくなっていました。改めて読み返してみると、当時は「理屈っぽい」と感じた表現が、意外にすんなりと受け止められるようになっていてビックリ。年を取ってから本を読み返すのも悪くないもんです。鷺沢さんの本をたくさん読んでいた理由も忘れていたけど、ちゃんと思い出しました。僕はこの人の「感情表現」が好きだったんです――。2011/10/26