内容説明
マチス、石川三四郎、バロウズ、ジュネ、ボウルズ…。天才たちはなぜモロッコにたどりついたのか?その魔術的な魅力に迫る悦楽の紀行エッセイ。著者自身の濃密な体験と五感の記憶が独特のイスラム文化や歴史への深い洞察を誘い、「地中海の余白」の肖像を描く。
目次
第1章 蜃気楼の港―タンジェ
第2章 蜘蛛の迷路―フェズ
第3章 砂と書物―アトラス越え
第4章 地中海の余白―タンジェ、ララーシュ
補遺(天蓋と王国―ボウルズとカミュ;砂漠/蜘蛛―ボウルズとボルヘス;ボウルズの短編と音楽について;ジェイン・ボウルズの栄光と悲惨)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
4
砂漠の静けさ、消えつつある旧い市街の喧騒といったモロッコの紀行文かと勘違いしていましたが、ずしりと重い文学論でもありました。タンジェ・フェズからタムグルドへと深くモロッコに入り込みながら、ポール・ボウルズを窓口に、様々な欧米の文人たちが訪れて深く浸かったこの一筋縄ではいかない世界を多層的に浮き上らせます。無知なワッピーはジャン・ジュネの原点がモロッコにあり、後年パレスチナ解放戦線に関わり、癌を得てからはパリから移住して、今はララーシュの朽ち果てたスペイン墓地に眠っているなんて知りませんでした・・・2014/09/23
nobusyu
2
久しぶりに興奮して読んだ本。エッセイ集だけど非常に充実した読後感を得られました。参考文献はすべて読みたくなります。2013/09/19
paluko
1
あーそうだよね、「アジアン」は「オリエンタル」じゃないんだなと。西欧にとってすぐ隣りの異文化といえばイスラム圏なんだなーとあらためて実感しました。2014/10/11
たいち
0
魔都モロッコ。呼ばれてる。2014/07/21
tomomi_a
0
ボウルズを追うことでモロッコが、モロッコの歴史を語ることでボウルズが、浮かび上がる。実際はその間に境界なんてなく、いくつかのなにについて、をやわらかく往還する語り口がすごく読ませる。ボウルズとモロッコと文学が掴めなさで絡めとってくるけど、最後のジェインに個人的には一番魅かれる。この滅裂さ、わたしも持ってる、という既視感とともに。2013/09/30