内容説明
真夏のある日、出勤途上の地下鉄で壮介は原因不明の吐き気に襲われた。それが、壮介自身の出産への助走だったとは…。この子は誰の子なのか、誕生する生物は人間なのか。生命の神秘、愛の倫理、家族の意味、すべての価値観は揺さぶられ始める。そして厳粛な瞬間はやってきた。誕生と死の扉を同時に開けた男の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さくちゃん
6
50代会社員で家庭を持つ壮介がある日突然妊娠してしまうという奇想天外な設定に最後まで目を離せなかったです。最初はなんだか不気味に感じていたゆきおばさんの社会への憤りや孤独さに胸が打たれるし、なかなか読みごたえのあるお話でした。2017/11/05
7a
3
50代、家庭を持ち仕事に生きるごく普通の男性の身に異変が起きた。何と、妊娠していたのだ。男性が妊娠したらどうなるか、というのを社会的な女性の立場から考えるというのではなく、だから男は外で働くべきなのだと結論づけるわけでもなく、女性の述べるフェミニズムとは異なった観点が新鮮だった。子を育む女性はどうしたって自分や子を「守る」。対して男性は世間の矢面に立つ以上「攻める」ことを余儀なくされる。好んで戦っているのではないにしろ、二つの性には大きな差があると感じる。2012/11/01
今夜は眠れない
1
上野瞭でなければ、発想しないであろう設定!笑ってしまう・けれど泣けちゃう。おもしろい。逝去が惜しまれる。
メイファマオ
0
男性の書いた異色のフェミニズム小説。主人公は平凡な50代のサラリーマン。ところが彼の生活は”自身の妊娠”というあり得ない出来事で一変してしまう…という大人のための寓話小説です。無駄な登場人物が一人もいないってトコがまた凄い。
あさ
0
読んだのはかなり前。ドラマを見てからでした。ドラマよりも苦悩が色濃かったです。ラストが手放しでハッピーエンドでなく、茫漠とした不安を感じさせるところが良かったですね。